2022.03.17 ZEBRAS INSIGHT EVENT

【イベントレポート】投資家と語る、ゼブラ企業向けタームシート「LIFE type1」 について


【イベントレポート】投資家と語る、ゼブラ企業向けタームシート「LIFE type1」 についてのイメージ

「事業・起業家の人生・投資家 のフラットな関係性の築き方 〜LIFE type1 (将来の公正のための長期的投資スキーム 試作1)作成の背景とその使い方について〜」というタイトルで、株式会社Zebras and Company(以下、Z&C)が公表した投資スキームについての勉強会を開催しました。

Coral Capital 創業パートナー 澤山 陽平さん、株式会社京信ソーシャルキャピタル 代表取締役 国本 丈弘さん、モデレーターには、SIIF(社会変革推進財団)常務理事工藤七子さんをお招きし、Z&Cからは陶山さん、田淵さんが登壇しました。

本記事では、勉強会の様子を一部ピックアップしてまとめております。

※「LIFE type1」はZ&Cが「株式会社陽と人」に投資した際に用いたスキームを汎用的に編集し公開したタームシートです。詳細はこちらをご覧ください。

「LIFE」の所感 -VCによる投資に対比して-

セッションではZ&C陶山さんからLIFE type1を作成した意図や構造の説明をしたのちに、登壇していただいた皆さんに所感を伺うことからダイアログが始まりました。

澤山さん
我々もスタートアップは世の中の企業のごく一部のモデルを指していて、VCの対象になるのも極一部だという話をよくしています。

今回のタームシートはそういったスタートアップ以外の企業に当てはまっていくものだと思います。
また、我々のJ-KISSをモチーフにしてもらったのかなと思いましたが、J-KISSは海外での実務の蓄積を元に開発しています。今回は新しい投資スキームを自分たちで開発したということで、完璧なものになる前でも見切り発車で公表して適宜修正していきながら進めるという姿勢が良いなと思いました。

「LIFE」はまだ変数が多く、投資家と起業家で対話して決めていく部分が多いので、今後普及して使ってもらい、それを踏まえてバージョンアップしていく必要があると思いました。

工藤さん
「対話」に注目していると感じました。そのまま使えるテンプレートというよりも「対話」という姿勢を織り込んだタームシートなのかなと思いました。たしかに「何%か」といった具体的な数字に関しては、もう少し活用経験が積みあがってくると面白いなと感じました。

国本さん
皆さんから意見が出ている通り「対話」しながらお客様によってフレキシブルに変更できるところが良いですね。

スタートアップは投資家から投資を受けることでゴールが決まることが多い中、「LIFE」では投資契約書の中でも「対話」重視、柔軟性を持っていることが特徴的との声がありました。

一方で、「起業家にとっての初めての投資家が重要である」、として次のトピックに移りました。

投資が対象企業にフィットするには

田淵さん
Z&Cでは、事業の成長や出資金額の話をする前に何故その事業を始めたのかといったパーパスやどんな社会課題の解決を目指すのか、どのようにそのインパクトを起こす設計をしているのかを掘り下げていくようにしています。

一方で、そのためには時間がかかってしまうため一長一短があり、今後、改善していきたいと思っています。

澤山さん
私も、起業家にはお金の話から入らずに「資金などあらゆる制約がないとしたときにどうやって事業計画を立てるか」と問いかけています。目標へ最速で行く方法を考えて、それを支えるものとして「お金」を捉えて資本政策を考える、という考え方をすすめています。

また、「LIFE type1」は「経営者からの買取請求・資本構成の見直しを幅広く認める」というところに投資スキームとしての思想が表れているとも感じました。

くわえて、投資家も多様化してきており、例えばZ&Cのようにファンドの形式を取らなかったり、償還期間を比較的長く設定して「長い期間をかけてでも、価値を生み出すことに重きを置く」ファンドも出てきているという事例も出てきました。

では、投資に対するリターンの設計はどうなっているのでしょうか。

「LIFE type1」におけるリターンの設計

陶山さん
いわゆるVC投資ではファンドの期限内でIPOやM&Aによって株式を現金化することが求められます。
それに対して企業の成長の形を縛らず、起業家の人生にも寄り添える投資スキームが必要だという考えのもと「LIFE type1」を開発しました。

起業まもないタイミングで、IPOやM&Aをすると決めることも、それをしないと決めることも難しいため、ある一定の成長を目指すことを投資家と企業で約束し、その目標値までいった時にどのようにリターンを返すか対話するという内容にしています。

参加者:
株主還元の際の金額やその際の条件は、どのように決めるのですか。

陶山さん
上場企業の株主還元と同様、会社の経営に大きな影響を与えないことを重視しています。具体的には、もしも創業株主以外が株主還元を求める場合、売上、利益剰余金、現預金の一定割合のうち「いずれか低い金額」と定めています。

条件面では、「●●業界のPER(1株当たりの当期純利益)は●倍」といった値を参考に、自社株買いの際の株価算定の考え方を投資時に整理しておくことで、後で揉める可能性を減らしています。今回のスキームは自社株買いの際の株価算定が一番難しいのですが、実際に自社株買いが実行される時でも「経営株主も含め」参加できるため、そこで公平性が確保されています。

他にも、参加者からの質問・コメントとして、ゼブラ企業は投資家の利益を追うだけでなく従業員や顧客といった多くのステークホルダーへの貢献も重視するので、それを考慮した上で投資リターンを設計していくべきではといった意見も挙げられました。

「LIFE type1」はどういった企業に合うのか

最後に参加者から「実際どういった企業に合うのか。」という質問がありました。

陶山さん
今回の投資スキームは、投資家と経営者の対話を促進させることを重視しています。つまり、「どういった企業に合うか」だけでなく「どういった投資家と企業に合うか」をセットで考える必要があります。
その上で、
・両者の信頼関係があり
・企業側が柔軟性のある経営を重視している  
場合に適したスキームだと考えています。

田淵さん:
今回の投資スキームは、投資先の意向次第でIPOなども視野に入れられるような柔軟性がありつつ、その上で、全てをルーズにするわけではなく、起業家が「今」コミットできるものをベースにして投資家と企業で約束するという考え方にしています。契約などで縛るのみならず、ソフト面・信頼面が重要なので、やはり両者の信頼関係があることが重要だと感じています。

登壇していただいた澤山さん、国本さん、工藤さんを初め、参加者の皆さんのおかげで実りある勉強会でした。

またゼブラ投資に関するディスカッションは開催したいと思うので、ぜひご参加ください。

PROFILE

ゼブラ編集部

「ゼブラ経営の体系化」を目指し、国内外、様々なセクターに関する情報を、一緒に考えやすい形に編集し、発信します。