2022.03.30 INSIGHT

ゼブラ企業に適した組織形態は? -ゼブラな法律の使い方 vol.2-


ゼブラ企業に適した組織形態は? -ゼブラな法律の使い方 vol.2-のイメージ

みなさんがゼブラ企業を創業しようと決意した場合、まず最初に何に着手するでしょうか。事業計画の精緻化、仲間集めなど、やることは色々とありますが、起業するための器、すなわち会社(事業体)の設立も、初期の段階から検討が必要です。

会社を設立する、といった場合、普通であれば「株式会社」を設立することを無意識のうちに念頭に置いている筈です。例えば、ユニコーン企業を目指して起業するのであれば、後述する理由から、その組織形態としてはほぼ間違いなく株式会社を採用せざるを得ません。

しかし、世の中で複数の人が力を合わせて事業を起こすための器は、株式会社に限られているわけではありません。ましてや、ゼブラ企業の在り方は様々であり、創業者の目指すところによっては、株式会社以外の器の方が適している可能性もあります。

そこで、今回は、事業の器として考えられる組織形態について、それぞれのメリット(・デメリット)を簡単に見ていきます。

株式会社

株式会社は日本で最も一般的な組織形態です。

そして、ゼブラ企業であっても、創業に際して最初の候補に挙がる組織形態は株式会社であると思います。それは株式会社には以下のような特徴(メリット)があるからです。

・株式会社は人々に最も良く知られています。創業したばかりの無名の企業が取引開始をお願いするにあたって、取引先に無用な警戒心を持たれずに済みます。従業員を採用するにあたっても、一番安心感をもって入社してもらえるのは株式会社でしょう。

・株式会社においては、所有者である株主と経営者である取締役の役割分担が明確で、所有と経営が分離しています。創業者が外部投資家から出資を募り、投資家が株主となった場合であっても、株主である外部投資家は直接経営に携わるわけではありません。このため、多数の外部投資家から資金調達しながら加速度的に成長していく器として適している面があります。

・株式会社の株式には株価があり、会社の成長に応じて株価を上げることができます。同じ株式1株であっても、出資の時期によって異なる株価を付けることが可能であるため、初期のリスクが高い段階から参画してくれた人たちに、より大きなリターンを与えることができます。これは意外と意識されていない株式会社のメリットです。

・また、株式会社においては、優先株式やストックオプションなど、創業者にとって便利な仕組みが実務的に定着しており、活用できます。これらの仕組みはスタートアップに関与している投資家やプロフェッショナルには広く知られていますので、余分な説明をしなくとも制度を理解してもらうことができ、彼らを自社のチームに招き入れ易くなります。

合同会社

もっとも、株式会社は、会社法で多くのルールが定められており、これらのルールに従って組織を運営していかなければなりません。例えば、株式1株には議決権を1個与えなければならず、複数議決権を有する株式は原則として認められない、というルールが株式会社にはあります。これは柔軟なガバナンス制度を設計したい創業者にとっては制約となりえます。

そこで、組織としてのガバナンスの自由度、柔軟性を重視するなら、「合同会社」も有力な選択肢となります。合同会社も会社法で定められた組織形態ですが、会社法において合同会社に割かれている条文数は株式会社に比べて大幅に少なく、株式会社ではルールが決まっていても、合同会社では関係当事者の自治に委ねられている事項が数多くあります。ゼブラ企業の場合、従業員一人一人を主体的に巻き込んだ仕組みを作りたいなど、ガバナンスのルールを自分たちの思うとおりに手作りで設計したい、というニーズは相応にあると考えられるので、そのような場合には合同会社は器として適しています。

但し、合同会社には、所有と経営の一体化が図られているという大きな特徴があります。すなわち、合同会社においては、出資者は株式会社のような「株主」にはならず、合同会社の「社員」というものになります。そして、合同会社においては、出資者である社員が、合同会社の経営(業務執行)を自ら行うこととなっており、株式会社のように経営を担当する取締役が存在して、所有(株主)と経営(取締役)が分離しているということがありません。そのため、外部の出資者には経営に全く関与して欲しくない、などという場合には適していないといえます。

また、当局からの許認可が必要な事業においては、許認可の要件として、事業体が株式会社でなければならない場合もあり、そのような場合には合同会社は使えません。

なお、総務省が公表している令和元年経済センサスの統計情報によれば、合同会社は、サービス産業における利用率が(株式会社と比べて)相対的に高いようです。サービス産業は人の関与方法が事業の鍵になることが多いので、柔軟な設計が可能な合同会社が好まれているのかもしれません。

その他の組織形態

事業を始めるに際して、組織としての法人格にこだわらないのであれば、「有限責任事業組合」(LLP)という選択肢もありえます。LLPの出資者(組合員)は、有限責任を享受しつつ、税務的には二重課税を防げるというメリットがあります。もっとも、LLPにおいては業務執行の決定を全員一致で行うことが原則であるため、少人数で密なコミュニケーションを図ることができるメンバーが自己資金で事業を行う場合など、一定の状況に利用範囲は限定されるといえそうです。とはいえ、ゼブラ企業であれば少人数で仲良く進める事業も少なくなさそうであり、利用価値のある組織形態だと個人的には思います。

更には、営利性を追求しないなら「一般社団法人」という選択肢もありますし、今回触れなかった「合資会社」、「合名会社」という会社形態もあります。また、今回は日本国内の組織形態を見ていきましたが、もちろん日本以外の国の法律に基づく組織形態を選択することもできるわけです。

みなさんも、自分のビジネスにはどのような組織形態が適しているのか、会社を設立する前に一瞬立ち止まって考えてみていただければと思います。

文:石田幹人
イラスト:カワグチタクヤ

PROFILE

石田幹人

銀行経営企画部でのコーポレート業務や、ベンチャーキャピタルでの国内外投資・組合運営を経て、弁護士資格を日本及びニューヨーク州で取得。現在は森・濱田松本法律事務所 パートナー。