2023.12.22 ZEBRAS

先人が築いた資本主義社会の上で、私たちなりの消費や社会の在り方を模索したい——Z&Cの新メンバー、田中さんの想い


先人が築いた資本主義社会の上で、私たちなりの消費や社会の在り方を模索したい——Z&Cの新メンバー、田中さんの想いのイメージ

2023年10月、Zebras and Company(以下、Z&C)に新たなメンバーが加わりました。

中途社員第1号として入社したのは、田中苑子さんです。学生時代は全国コンクールに出場するほどピアノに打ち込み、社会人になってからは、事業会社での複数回にわたる新規事業の立ち上げ、コンサルティング会社での経営支援に従事してきました。

音楽からビジネスへ、事業側から経営支援側へ、活躍の場を移してきた背景にはどんな想いがあるのでしょうか。これまでのキャリアを振り返りながら、Z&Cとの出会い、転職の決め手、今後の挑戦について語ってもらいました。

ピアニストを志した学生時代。「自立」を求めてビジネスの世界へ

——まずは田中さんの経歴について教えてください。ピアノに打ち込む学生時代だったそうですね。

小さい頃からピアノを習っていました。コンクール前は1日10時間練習するなどピアノ漬けの日々で、将来はプロになるものだと思っていました。

高校は音楽高等学校に進み、クラシックピアノの厳格な世界とはまるで違う、ジャズやミュージカルの世界に初めて触れました。途中短期留学したポーランドでは、出演した現地のコンサートで初めてスタンディングオーベーションをもらうなど言語を超えた音楽の力を感じ、ピアノの魅力を再発見。音楽の幅広さを知り、演奏の技術を追求するだけではなく、表現することの楽しさを覚えたんです。

——大学は四大に進学されました。音楽大学に進まなかったのはなぜですか?

世界的に有名なバイオリニストの五嶋龍さんという方が、ハーバード大学で物理学を専攻していたことを知り、音楽以外の世界にも触れたほうが表現が豊かになると思ったから。大学では登山サークルに所属するなど、音楽以外の活動や人と接しました。

就活の時期になると、本格的にキャリアを考えるようになりました。実は、ピアニストを目指すか、就職をするか迷っていたんです。というのも、プロを目指すなら、海外留学するのが一般的ですし、日本ではクラシックピアノで生計を立てることが難しい現実があります。

プロとしてピアノを続けるなら、経済的な面で誰かを頼らなければならないことが気がかりでした。最後まで悩みましたが、最終的には「自立したい」気持ちが勝り、就職することにしたんです。

お金が強い世界と、お金のない世界に触れて

——ピアニスト志望から一転、ビジネスの世界に。それからどのような経験をしてきましたか?

新卒で入った事業会社では、複数の新規事業立ち上げに関わりました。web メディア/プラットフォーム事業、イベントプロデュース事業、エンタメ施設/コンテンツ事業等で、営業やPM、事業責任者など、幅広く体験させていただきました。

新規事業という先行きが見えづらい領域を進めてこれたのは、ピアノに打ち込むなかで身についた「自分の中に基準を持って努力し続ける習慣」があったからかもしれません。

音楽には万人に共通する絶対的な指標がありません。コンクールですら、審査員との相性が勝負を分けることもあるくらい。だからこそ、結果に一喜一憂せず、自分で自分を評価することが大切でした。

良くも悪くも、外部や他者からの評価に左右されにくい性格は、カオスな新規事業推進と相性が良かったのかもしれません(笑)。

——事業会社を退職後はコンサルティング会社へ転職し、経営支援の領域で働き始めましたね。

数年働くなかで、自分の大切にしたい「自立と共生」という価値観が見えてきました。「自立と共生」とは、異なるバックグラウンドを持つ自立した個人が、出会い、化学反応を生むことで、さらに豊かになる営みのこと。

ピアノにのめり込む私が、他の音楽や音楽以外に取り組む友人たちと出会い、世界が広がった原体験がもとにあります。

この価値観を資本社会に落とし込む一つの手段として、経営者支援があるのではと思いました。想いを持った経営者の活動を促進し、花開かせることで、様々な化学反応が生まれる。その結果、経営者自身も周りの人も、そして社会も豊かになると考えたんです。

ただ、Z&Cに転職する1年くらい前から、お金優位で動く経済システムやコンサルティングの在り方に違和感を感じるようになりました

——どんな違和感でしょうか?

新規事業創造領域の支援を担当することが多く、なかには「絶対に成功させる」という意志が感じられない依頼もあったんです。一番衝撃だったのは、クライアントから「僕たちには意志も知見もないから、すべて教えて欲しい」と言われたこと(笑)。

経営目標を達成するためや、お金を稼ぐために新規事業が必要なだけで、意志も知見もないからとアウトソーシングする依頼主。そして、その依頼料で潤う経営支援側。なんだか不自然なシステムだと感じました。

それで、「一度、お金がまったくない世界を見てみよう」と思い立ち、会社に一時渡航の理解をいただき、アフリカのエコビレッジに滞在することにしたんです。お金もインフラもない環境で、お茶を飲むだけでも、薪を拾ったり水を汲んだりと、2時間くらいかかるような生活を経験しました。

——真逆の生活をしてみたんですね。いかがでしたか?

それはそれで大変でした(笑)。生きるために食べ物を確保するだけで、1日が終わってしまう。ものを考えたり、生活をより豊かにしたりする時間はほとんどありませんでした。

そんな世界から見ると、今の日本はすごく基盤が整っています。ただ、消費活動がいき過ぎている面があることにも気づきました。お金をたくさん使う分、お金をたくさん稼がないといけなくなっていますし、過度な消費活動によって自然環境や地球の資源が失われています。

お金が強い世界とお金のない世界を体験した結果、両方のいいとこ取りができたらいいと思いました。先人が築いてくれたインフラや資本主義社会を土台に、本当にこれから必要なお金の使い方、社会の在り方を模索することが、私たちの世代だからできることかなと。

「人の意識変容」にも取り組めることが、入社の決め手

——お金と社会の在り方を探求し始めた田中さんは、どんな経緯でZ&Cと出会い、入社に至ったのですか?

アフリカ滞在で考えたことを行動に移すための方法を考えるさなか、WIREDの「リジェネラティブ・カンパニー特集」でZ&Cのことを知り、「社会性と経済性の両立」というキーワードに自分の考えとの重なりを感じました。

その後、Z&Cが書籍『ZEBRA CULTURE GUIDEBOOK Vol.01:ゼブラ企業が分かるガイドブック「ゼブラ企業カルチャー入門」』を出版したタイミングで、正式に挑戦したいと思うようになり、勢いのまま応募フォームを送信。

するとお盆期間にもかかわらず、すぐに阿座上さん(共同代表・阿座上陽平)ら経営メンバーが面談をしてくれたんです。正式な面接と課題ワークを経て、入社が決まりました。

——Z&Cを選んだ決め手はなんだったのでしょうか?

一つは、Z&Cが目指す社会を、「仕組み作り」と「人の意識変容」の両面からアプローチしていることです。

今後のアクションを考える中で、インパクト投資などの仕組みづくりをしている会社からお話をいただくこともありました。ただ、仕組みができたとしても、人の意識が変わらなければ社会は変わらないだろうと、しっくりこなかったんです。

「ムーブメント・コミュニティづくり」を通じて、主体的に動き出したいと思う人を増やしているZ&Cだからこそ、「社会性と経済性の両立」を社会実装できると考えました。

また、採用過程で、Z&Cの出資先であり、社外取締役の味愛さん(株式会社陽と人 代表 小林味愛)が代表を務める「陽と人」の新規事業を考えるワークをしました。その際に、自分でも驚くほど没頭できて、あっという間に時間が過ぎたんです。

経営者に意志があり、社会的意義を強く感じられる事業に携わるのはとても楽しく、これが自分のやりたいことだと確信しました。

「自立と共生が両立する組織」「人間関係から始まる仕事」に驚き

——入社後2ヶ月が経過しましたね。今はどのようなお仕事をされていますか?

阿座上さんや田淵さん(共同代表・田淵 良敬)のプロジェクトに入ってMTGに同席し、議論を整理したり資料を作ったりしながら、徐々に自分の担当領域を見出していこうとしています。また、ゼブラ企業にまつわるイベントごとには、すべて顔を出しているんです。静かに座って勉強するというよりは、行動することで気づきや学びを得ることを大切にしています。

——特に印象的だった学びや気づきを教えてください。

まず、「社会性と経済性の両立」を体現しているゼブラ企業のみなさんがいることを心強く思っています。こういう世界が着実に生まれつつあり、自信を持ってさらに追求すればいいと勇気づけられました。

また、Z&Cの働き方は「自立と共生」に近しいものも感じます。早朝に働くメンバー、夜のほうがパフォーマンスが出るメンバーなど、各人のタイプはバラバラ。でも、ルールや規則で縛るのではなく、責任を持って自分のスタイルを確立しつつ、対話を通じてみんなの折衷案を見つけていく組織スタイルがあります。

——働き方や仕事の仕方で、意外だったことはありますか?

Z&C自体のメンバーは4人ですが、少人数で働いている感覚がないことです。支援先の仲間のみなさん、関わってくださるパートナーのみなさんと接する機会がたくさんあります。入社2ヶ月ですでに、前職在籍中に出会った以上の人と関わりを持つことができ、世界が広がりました。

さらに、仕事やプロジェクトの生まれ方も新鮮でした。一般的には、依頼やフィーありきでクライアントとのコミュニケーションが発生します。でも、Z&Cは「友人とわちゃわちゃしてたら仕事になった」というように、人間関係が仕事の前提にあるのです。

だからこそ、価値観や世界観を大切にした経営支援や投資支援が成り立つのだと思いました。

人間を肯定しながら、人と自然の共生を実現する

——今後、特に手がけてみたいプロジェクトや領域について教えてください。

関心のある分野は「人と自然の共生」です。山や自然で遊ぶことが好きなので、純粋に失われてほしくないという理由もありますし、未来の私たちが地球でより良く生きるためにも必要なことだと思います。

それを、人間の利己性を考慮した上で実現していきたいです。人間はもちろん、生きとし生ける者はみな本質的には利己的にできていると思うので、そこに向き合わないアクションは持続的でないし、共感を集めにくい。結果、社会的インパクトも生み出せないと思います。

人間の存在を肯定したいという意識もあるかもしれません。ともすると「生きているだけで環境破壊をしている」とも言われかねない中で、人間が幸せに生きることが、より良い地球環境を作ることにもつながっている。そんなアクションを増やしたいと思っています。

——Z&Cで働くなかで、そうしたアクションのヒントはありましたか?

はい、いくつかありました。先日、投資先のNEWLOCALが町づくりをする野沢温泉に行ってきました。そこでは、人が鹿を駆除して増えすぎを防止したり、木を間伐することで下層植生の発達を促したりすることで、森を長生きさせていました。

また、ゼブラの支援する起業家支援プロジェクトで出会ったあるスタートアップは、人が建物内を歩く振動によって、土中環境を豊かにする仕組みを作っていました。こうした仕組みを、より多く社会実装させていきたいです。

——最後に、実現したい未来への意気込みをお願いします。

アフリカ渡航のときのように、私は思い立ったらすぐに行動してしまうタイプだと思います。その行動力を生かして、様々な現場の一次情報に触れていきたいと思います。そこで得られた気づきや学びをZ&Cの事業に還元し、ゼブラ企業のみなさんの活動をよりサポートできたら嬉しいです。

一次情報に触れていく過程で出会った人たちのつながりを作り、さらなるゼブラムーブメントの渦を生み出していきたいと思います。

PROFILE

Fumiaki Sato

編集者・ライター・ファシリテーター。「人と組織の変容」を専門領域として、インタビューの企画・執筆・編集、オウンドメディアの立ち上げ、社内報の作成、ワークショップの開催を行う。趣味はキャンプとサウナとお笑い。