2026.03.12 ZEBRAS

【創業5周年】ゼブラムーブメントを次のフェーズへ。5年間で変わったゼブラを取り巻く環境と、チームの成長


【創業5周年】ゼブラムーブメントを次のフェーズへ。5年間で変わったゼブラを取り巻く環境と、チームの成長のイメージ

Zebras and Company(以下、Z&C)が創業から5年を迎えました。「社会にいいことをしている企業や経営者に、きちんとお金が回る仕組みをつくりたい」。そんな想いから生まれたZ&Cの活動は、草の根のムーブメントとして始まり、今や国策にも明記され、行政・自治体や大手企業にまで広がっています。
この5年間で、社会やゼブラ企業を取り巻く環境はどのように変わったのでしょうか。そして、Z&Cで働くメンバー自身の変化とは。共同創業者の田淵良敬さん・阿座上陽平さん、メンバーの阪本菜さん、田中苑子さん、玉岡佑理さんの5人に、5年間の振り返りと6年目に向けた抱負を聞きました。

草の根から国策へ。5年間でZ&Cが変えてきたもの

——5周年おめでとうございます。ゼブラ企業を日本で広め、投資・経営支援、ムーブメントづくり、ゼブラ的経営の体系化を実践してきたこの5年。Z&Cや社会にはどのような変化がありましたか?

田淵さん:
創業期は勉強会を開いたりオンラインイベントをやったり、自分たちで記事を書いてSNSで発信したり、草の根的な活動からスタートしました。それが国の動きにも広がっているのが、一番の大きな変化です。

また、関わってくださる人たちの裾野も広がりました。いわゆる「社会起業家」の枠には入ってこなかった人たちも、ゼブラ企業というコンセプトに興味を持ち動き始めています。

もともと実践してきた活動がゼブラ企業というコンセプトによって可視化されたケースもあるのですが、僕らの投資先・支援先の多くがそうであるように、最初からゼブラ的経営を意識して創業する企業も出てきた。社会にいいことをしたい経営者、そしてそれを応援したい人たちが、確実に増えてきたのを感じています。

5年前は展望を説明するために使っていたTOC(セオリーオブチェンジ)も、最近は「こういうことをやってきました」と過去を振り返る文脈で使うようになりました。

——経営者側にも支援者側にも「ゼブラ」は浸透してきたと。これだけ広がった背景にはなにがあったと思いますか?

阿座上さん:
創業期から言われていた社会課題が、日に日に顕在化してきたことがあると思います。特に地域では人手不足が顕著になっていますし、去年のお米不足のように気候変動の影響が身近になっています。これまで事業には関係のない「外部性」として捉えられてきた、環境や文化といった要素。それをビジネスに取り入れないと立ち行かない、という危機感が大きくなっているのだと思います。

そうした背景もあり、地方でのゼブラ企業の取り組みは予想外なほど活発になりました。特にアトツギの方々が、コロナ禍や代替わりを機にさまざまな取り組みを始めています。地域にも自社の売り上げにも良いインパクトが生まれた事例が増えるなか、「地域の中小企業が面白い」と注目されることも多くなりました。

——その他、予想外だったことはありますか?

阿座上さん:
兄・姉ゼブラ(地域を牽引する名士企業)との関わりが増えていることで彼らの地域への影響力の大きさを改めて感じていることは一つありますね。活動初期から地域のアトツギの方々からの反響はあったものの、当初はユニコーンとの比較から生まれている概念でもあるため創業期の子ゼブラとtの関わりがメインになると考えていました。しかし、兄ゼブラが持つ信頼や技術、地域とのつながりが、地域エコシステムを生み出す起点になっていることがわかり、兄・姉ゼブラと子ゼブラの連携に大きな可能性を感じています。

また、ゼブラ的経営や事業を実践する大企業(親ゼブラ)のリソースが地域や自然、文化といったこれから長期的に価値を生み得る領域に関わりもで始めていることも予想外でした。兄ゼブラと手を組みながら地域での事業をする例も増えています。大きな会社の関わりとしては金融側の人たちがゼブラに興味を持ってくれると思っていましたが、事業サイドの会社(おやゼブラ)の活動が先行しているのもこうして活動してきたからこそわかったことでした。元々日本には「三方よし」や「いい会社」といった経営に関する概念があり、それを実践している会社が多かったということなんでしょうね。

——周囲の人からの反応や、Z&Cの見られ方が変わってきた実感はありますか?

苑子さん(田中苑子):
あります。以前は、周りも「自己成長が大事」という風潮が強かったので、ゼブラ企業に関しても「そんな考え方があるんだ」と珍しがられている感覚がありました。でも最近は、ゼブラやインパクト界隈に参画する人も増えて、ゼブラの認知がある上で、その中身について詳しく聞かれることが多くなりました。

たまちゃん(玉岡佑理):
Z&Cの取り組みに興味を持ってもらえるのは、最初からムーブメントづくりや、社会全体の行動変容・意識変容を起こすアプローチをとってきたからこそだと思います。一方で、ゼブラというコンセプトの深いところまで理解してもらうには、まだまだ伝え方を工夫していかなければとも感じています。

——ゼブラのコンセプトが広がる一方で、幅広い解釈が増えてきているということですね。どのように対応されているんでしょうか。

阿座上さん:
どの経路からゼブラに触れたとしても、最終的には僕らに辿り着くような設計を意識しています。記事コンテンツやインパクト・ジャーニー・レポート、書籍といった、ゼブラを実践したい方が自ら考えられる”種”を色々なところに蒔いておく。そうすることで、解釈の異なる「ゼブラ」に触れて「何か違う」と思った方に、Z&Cが発信する内容を参照してもらおうと思っているんです。

また、ローカル・ゼブラ実証事業などを通じて、全国にゼブラを深く理解し、実践している仲間が大勢います。そういう方々にアクセスしてもらうことで、コンセプトがある程度正しく届くようになっています。

自治体、大企業、海外を巻き込む新たなムーブメント

——直近の1年で、特に大きかった変化や気付きがあれば教えてください。

阿座上さん:
大きかったのは、省庁の動きが自治体や金融機関(地銀)の行動に直結するという気付きです。

以前は、各地の自治体や金融機関の中でゼブラの考え方に共感してくれた個人が自発的に私たちに連絡をくれていました。それが、中小企業庁や金融庁の公式資料に「ゼブラ企業」という言葉が記載されるようになり状況が大きく変わりました。

「国が推進している」という根拠ができることで、各自治体ではゼブラ企業を支援するような動きが活発に。省庁の言葉にここまで影響力があるのかと驚きました。

——自治体や金融機関の行動原理を目の当たりにしたと。

阿座上さん:はい。もう1つの大きな変化として、大企業との共創プログラムが本格始動したことです。2025年は、日建設計との社会環境共創プログラム「FUTURE LENS」、日鉄興和不動産とのリサーチプロジェクト「POST GROWTH CITY LAB(PGCL)」が動き出しました。

FUTURE LENSは単に資金を提供するだけでなく、プロフェッショナルとして対等に向き合い、一緒に前へ進む伴走をしてきたことで、経営者それぞれに実質的な変化が生まれています。結果として、彼らが「心からおすすめする」と口コミで推薦してくれることでプロジェクトに興味を持つ方が増え、さらなる広がりが生まれています。PGCLはまだ立ち上げ段階ですが、同様の展開を期待しています。

田淵さん:
加えて、海外での活動もここ1〜2年で広がっています。マレーシアと韓国では政府系機関から招かれて登壇し、アメリカのZebras Uniteとはインパクトレポートの英語版を共同制作しています。さらに、ベルギーのゼブラ活動家が執筆する書籍に、日本のケースを寄稿することに。国策にもなっている日本でのゼブラの広がりは、引き続き海外からも注目を集めています。

広がるコミュニティと、実践で学んだ難しさ

——続いて、メンバーの皆さんの変化についても聞いていきたいと思います。この1年の学びや気付きについて教えてください。

菜さん(阪本菜):
一番大きかったのは、インパクトの領域で、同じ方向を向く同世代の仲間と出会えたことです。2024年から業界最大規模のカンファレンス「IMPACT SHIFT」の運営に携わっていたこともあり、インパクトに興味のある友人や実践者とのつながりが広がりました。

最近は、自分が興味のあるストラテジックデザインや建築、まちづくり、ジェンダーの領域でもつながりができています。Z&Cの存在が大きくなるにつれて、ゼブラのことをすでに知ってもらった上で、色々とディスカッションできることがありがたいです。

そうした土台が得られたからか、ゼブラのことやZ&Cの面白さを自分の言葉で語れるようにもなりました。ゼブラのコミュニティが好きだということも再認識しましたし、自分のやりたいことはこの道の先にあるということも確信しました。なるべく特定のエリアや業界に絞らず、バイブスの会う人たちと繋がりながら、10年、20年とこのコミュニティに関わり続けられたらいいなと思っています。

——菜さんのなかで、改めて覚悟が決まった1年だったんですね。

たまちゃん:
私の一番の学びは、投資先の伴走支援やFUTURE LENSのプログラム設計に携わるなかで、支援者としての「スタンスをとる」ことの重要性とその難しさを実感したことです。

例えば資金調達の支援をするにしても、正解がないなかで、支援先の経営者に対してその時点での自分のベストを考え抜く必要があります。もちろん一緒に考えていくのですが、その大切さと難しさを感じていました。また、Z&Cに入ってから、パッションを持って突き進む人たちに囲まれているからこそ、「自分は本当に何がしたいのか」と問い直すことも増えました。これからもベースとなる知識と経験を積みながら、自分なりのスタンスを確立していきたいと思っています。

苑子さん:
この1年の変化は、「思想でつながる」だけではなく、「一緒につくる」仲間が増えたことです。ゼブラやインパクトという思想で行動をしている人たちとたくさん出会うようになり、実際にイベントをつくるなどのアクションを起こすことができました。

そうやって実践してみたからこそ気づいたこともたくさんあります。たとえば、Z&C以外の仲間たちと、実験的にプロジェクトのTOC(セオリー・オブ・チェンジ)をつくったときのこと。ゼブラ的経営の理論としてはわかっていても、実際につくるのは本当に大変で、仲間と一緒に夜通し考えながら作りました。実際に行動することで感じられる難しさや手触り感があるんだと知りました。

無形から有形へ。4つの取り組みで「実をつくる」6年目へ

——では、6年目の方針を教えてください。

阿座上さん:
大きく4つに取り組みたいと思っています。1つ目は既存事業の進化です。経営伴走や共創プロジェクトも進めていきます。ゼブラアカデミアのような社外メンバーと一緒に研究するオープンなラボも立ち上げたいと思っています。

2つ目は地域にある子ゼブラ・兄ゼブラと自治体や金融機関等とのエコシステムづくりについて、深く見ていきたいと思います。個別のゼブラ企業の成長に関わることでもあり、日本の持続性にもつながるテーマです。その関係性を紐解きながら型をつくっていったり、変化を起こせる部分には関わりをつくっていきたいと思います。

3つ目が、社会インフラやディープテック領域への投資スキームの構築です。これまで支援してきたゼブラ企業の事業領域は、比較的生活やソフト面が中心でした。今後は、よりハードの領域にもアプローチできればと思っています。

4つ目は、ファイナンス領域の新しいサービスの立ち上げです。5年間を通じて見えてきた”ファイナンスのギャップ”を埋められるようなサービスを構想していて、資金調達もしようとしています。

——ファイナンスのギャップとはどういう意味ですか?

田淵さん:
ファイナンスのギャップというのは、「本来お金が届くべき企業に届いていない」状態のことです。

もともと私たちがトライしようとしたのは、既存の金融では届けられない長期的なリスクキャピタルや成長資金を提供すること。投資的なニュアンスが強いと思っていました。しかし、この5年間ゼブラ企業と向き合い続けるなかで、融資の領域の可能性に気がつきました。

本来企業にはさまざまな性質の資金が必要なのに、金融機関から「リスクが高い」と判断されて融資を受けられない会社があります。そうした企業のなかに、私たちから見ると貸しても大丈夫だと思えるところがあるんです。

ゼブラ企業が持つ関係資本、ステークホルダーとの信頼や繋がりは、インパクトの源泉であると同時に、企業の信用力の源泉でもあります。資金や売り上げ以外の価値を押し測る、いうなれば「ゼブラレンズ」によって、これまでとは違った尺度で評価できるんじゃないかと思っています。

——融資領域の新たなサービスがリリースされるのを楽しみにしています。最後に、みなさんの意気込みを教えてください。

田淵さん:
先ほどの4つの方針を通じて、「実をつくる」1年にしたいと思っています。この5年間で、認知やムーブメント、国策への明記といったある種の無形資産を積み重ねてきました。

それを有形のものとして、社会実装させていく1年にしていきます。地域ビジネスの構築、共創プロジェクトの拡張、資金調達や新サービスを含むこれまで以上に大きなお金を動かす取り組みを通じて、実例を生み出していきたいです。

自治体・金融機関、ゼブラ企業、支援サイドのロールモデルとなるものがつくれれば、ゼブラの世界観はもう一段広がっていくはず。積み重ねた無形のものが消えていかないよう、実際の仕組みや事例に落とし込んでいきたいと思います。

菜さん:
これから実をつくっていくにあたって、今の5人体制では限界があります。採用に関わっている身として、今年こそは新しい仲間を加えたいです。ファイナンスや事業戦略の経験がある方から若手の方まで、全方位で募集しています。

田淵さん:
僕個人としても、一緒に働きたい、ゼブラに巻き込みたいと思える人に出会えるよう、今まで関わったことない領域の方々ともお会いしていければと思っています。

苑子さん:
私は今年、子ゼブラ支援に力を入れていきたいと思っています。もともと興味あったところですし、「子ゼブラ支援をしたいけれどどうすればいいか」と問い合わせいただくことが増えてきたんです。型化することができれば、世の中にとって価値がある領域だと思っています。

たまちゃん:
入社してそろそろ2年になるのですが、この1年は投資先の伴走支援や資金調達支援など、より経営に近い仕事を経験してきました。今年はそれをさらに深めていきたいと思います。これからZ&Cが、社会実装に本格的に動き始めるとしたら、挑戦できるチャンスもたくさんあるはず。入社後の学びを活かして、ひとつずつ成果を出しながら、経験を積み上げていきたいです。

阿座上さん:
「ゼブラ」という言葉では語りきれなかった各領域——森、文化・芸術、地域のコミュニティのあり方など——が、それぞれ持続可能な活動として立ち上がるタイミングが今年来ると感じています。目指している世界は近くても、切り口も担い手も違う。そういう動きがコレクティブに生まれていく1年になればいいなと思います。

PROFILE

Fumiaki Sato

編集者・ライター・ファシリテーター。「人と組織の変容」を専門領域として、インタビューの企画・執筆・編集、オウンドメディアの立ち上げ、社内報の作成、ワークショップの開催を行う。趣味はキャンプとサウナとお笑い。