2022.01.20 INSIGHT

Zebras and Companyがジェンダーレンズに取り組む理由


Zebras and Companyがジェンダーレンズに取り組む理由のイメージ

こんにちは。ゼブラアンドカンパニー(以下、Z&C)共同創業者の田淵です。

Z&Cでは注力カテゴリとして「老舗」、「ジェンダーレンズ」、「リジェネレイティブ」、「教育」という4つの領域に目を向けています。

この記事では、なぜ我々が「ジェンダーレンズ」に注目しているのか。
私がこれまで海外で学び、インパクト投資に関わってきた背景と共にお伝えしたいと思います。

ジェンダーレンズという言葉が広がった背景

ジェンダーレンズというと聞き慣れない方もいるかもしれませんが、フェムテックという言葉だとスタートアップや投資の業界に近い方はお聞きあるのではないでしょうか?

日本ではフェムテックの方が知名度は高いですが、海外ではジェンダーレンズという言葉で浸透してきています。
ジェンダー(性)というメガネを通して世の中を見るという意味で、例えば、投資の一分野としてのジェンダーレンズ投資が海外ではよく知られており、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなど名だたる投資銀行が行っている投資です。

GIIN(インパクト投資に関するグローバルネットワーク)が規定する、ジェンダーレンズ投資のアプローチは下記の三種類があります。

・女性起業家への投資
・職場のジェンダー平等を促進する企業への投資(従業員、役員、株主、サプライチェーン)
・女性達の生活を飛躍的に向上させるサービスを提供する企業への投資

また、時代や社会背景によってさまざまなタイプに分類することができます。例えば、1970年代に始まったMicrofinance は発展途上国を中心に貧困状態の小作農などを対象に小規模な融資を行いますが、女性の自立支援を掲げたものが多く、ジェンダーレンズ投資の一種と捉えることができます。発展途上国の女性の社会的な地位が低いところが多かったという背景もありました。

写真:Pixabay

「ジェンダーレンズ投資」という言葉は、2009年にアメリカのNPO であるCriterion Institute にいた女性二人から生まれたと言われています。その後、中小企業の女性経営者などを支援する動きを経て、女性の起業家へ投資を行うような、おそらく現在最もポピュラーな使われ方であるジェンダーレンズ投資が広まりました。大きなきっかけとなったのは、2017年ごろからアメリカを中心に始まった「#me too」運動です。アメリカの起業家やベンチャーキャピタルのほとんどは白人男性であることが問題視されるようになりました。女性の抱える問題をテクノロジーで解決するというフェムテック市場もこの前後に急拡大しており、2012年にベンチャーキャピタルがフェムテック企業向けに投資した額は約68億円でしたが、2019年には1,000億円となりました。これは、「#me too」の後に女性のベンチャーキャピタリストが急増したことも原因の一つだと言われています。

写真:Unsplash

日本においてもジェンダーレンズに関しては大きな動きとなってきており、キャシー松井さんが90年代に提唱したウーマノミクスを安倍首相が2014年に成長戦略の一つとして発表、世界最大の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2017年から女性活躍指数に基づく投資を始めたことが日本のジェンダーレンズ投資にとって大きな転機となりました。また、笹川平和財団は、2017年にアジアを対象にジェンダーレンズ投資を行う100億円規模のファンドを設立することを発表しました。

私とジェンダーレンズとの接点

私は、10年近くインパクト投資業界に身を置いています。キャリアの中で、ウガンダのNGO BRAC Ugandaで働き、 小学校のアフタースクール事業を手がける放課後NPOアフタースクール、子育て支援を行うAsMamaに投資・経営支援事業として関わらせていただきました。2019年からはカルティエのパリ本部が行う女性社会起業家支援プログラムであるCartier Women’s Initiative(「CWI」)の東アジア地域の審査員プレジデントも務めさせていただいています。また、2015年ごろからは特に海外でインパクト投資業界の中でもジェンダーレンズ投資という言葉や実際に行っている投資家たちに会う機会が何度もありました。

そういった中で、社会課題としてのジェンダーギャップを多く見てきました。ウガンダのような発展途上国では女性の地位は一般的に非常に低く、経済的自立ができなかったり、家庭内暴力に苦しむ方も多くおり、BRACではそういった女性のサポートもしていました。日本においても、放課後NPOアフタースクールに関わった際は、子どもが小学校に上がったら夕方3時以降に子どもの面倒を見てくれる保育園がなくなり、お母さんが仕事をやめなくてはいけないということは、「小1の壁」と呼ばれる課題でした。CWIの起業家が行う事業では、インドで女性の月経に対する差別的な見方や月経用品不足を解消する事業を行っているものもあります。

女性がのびのびと活躍することが当たり前である環境もある

一方で、自分のキャリアを振り返ると、周りに働く優秀な女性が多かったと感じます。2年間身を置いていたボーイング シアトル本社では、15人くらいのチームのうち、中国人、フィリピン系アメリカ人、アメリカ人の女性などが半分弱程度いました。BRACでインターンをした時は、同じくインターンをしていた同僚はコロンビア大学から来ていた韓国系アメリカ人の女性、LGT Venture Philantropyで働いていた時は、上司はフィリピン人の女性とアメリカ人の女性で、チームにもオーストラリア人の女性がいました。社会変革推進財団で仕事をさせてもらっていた時も同僚に女性は多かったです。つまり、女性が上司や同僚として活躍しているというのが、ある意味自然でした。

彼女たちをみていると、当たり前ですが、女性だからといって能力に差があるわけではなく、むしろインターナショナルに活躍する人も多い。国の違いや職種、固有の組織文化などが理由というのもあるかもしれませんが、女性だからということが特別取り上げられるようなこともなく、皆のびのび働いているように見えました。

そう思うと、社会課題を目の当たりにしながらも、優秀でのびのびと活躍する女性が周りに多くいるというギャップがあり、こうした経験が、後述する形式上の平等性を保つに止まらず社会を再構築していくべきだと考えるようになった理由の一つなのかもしれません。

日本や海外の代表的なジェンダーレンズ企業例

上記GIINの「女性起業家」、「女性達の生活を飛躍的に向上させるサービスの提供」のカテゴリで有名な海外の企業には、アメリカのThinx(シンクス)があります。女性の月経吸水ショーツなどを製造・販売する会社ですが、2011年に日本人の血を持つミキ・アグラワルが共同創業し、現在は100億円近い売上を持つ会社です。アメリカでも当時は月経という言葉は公の場ではタブー視されていましたが、Thinxはそういった人々の固定概念を変容させてきました。ニューヨークの地下鉄で「月経」という言葉を使って展開した広告が、ニューヨーク市交通局から過激とみなされ禁止されたことが民衆からの強い反発に繋がり、最終的に広告展開を認めさせたのは有名な話です。

「THINX」
NYC地下鉄で展開した広告 (出典:THINX)

日本では、フェルマータが挙げられます。2019年にAmina Sugimotoさんと、Hiroko Nakamuraさんが共同創業。日本や海外の女性に関わる製品を扱うプラットフォームを運営しており、日本における女性の月経やその他女性のライフステージにまつわる課題に関する人の意識変容を目指されています。

また、Z&Cの経営支援先である陽と人は、福島で生産される柿の皮を使って女性のデリケートゾーンのケアのためのオーガニック製品を製造・販売しています。創業者の小林さんは、過去に男性的職場環境の中で頑張ってきたが違和感を感じ、女性が無理をしなくても活躍できる社会を目指し、製品販売以外にも、現代の人々が持っている無意識のバイアスを取り除くための啓蒙活動などもされています。

「職場のジェンダー平等を促進する企業」のカテゴリでは、日本の企業は世界で比べると進んでいるとは言い難く、 男女の平等性に関するリサーチを行うEquileap社が2019年に笹川平和財団と協力して発行したレポート「GENDER EQUALITY IN JAPAN, HONG KONG & SINGAPORE」によると、トップ5はシンガポールの企業が占めていますが、資生堂が6位に入っています。

ジェンダーレンズに関して感じていること

機会の分配や労働条件での平等性などは性の差別なく当然保たれるべきだと思うのですが、全てを既存の枠組みのベースで同じにすることが良いとは思っていません。そもそも現代社会、特にビジネスや企業社会は、男性社会をベースに作られたものです。例えば、そこに女性を無理やり当てはめて管理職の数が増えれば良しとすることには、通過点としては良くてもゴールや目的とすることには少し違和感を感じます。

男性社会の枠組みに女性を当てはめてよしとするのではなく、性の違いに囚われずのびのびとその人の長所を生かして仕事ができるような環境を作るために社会自体を再構築していけると良いと思っています。男性と女性は体の仕組みが違い、女性には月経などによる身体的な負担がありますから、男性は女性をより理解し、女性の身体的な負担が原因で力を発揮できないということがないように、社会制度を整えていく必要があります。

一方で、少なくとも日本においては男性や女性に対するステレオタイプ的なバイアスが少なからずあり、女性自身も無意識のうちに発言を控えたり、諦めたりするようなケースもあると聞きます。こういったバイアスを取り除いていくための性の違いに関する教育や啓蒙は根本的な問題解決として今後重要になるのではないでしょうか。

Zebras and Companyの取り組み

Zebras and Company(「Z&C」)では、ジェンダーレンズを投資・経営支援事業における注力分野の一つとして置いています。また、コラボレーション企画としては、Mashing Upさんでの連載「ゼブラとジェンダーレンズ」、CWI・Mashing Up・Z&Cの共同企画連載「Women Driving Change – グローバル女性起業家の今」があります。その他にも日経SDGsジェンダーギャップ会議に登壇させていただいたり、三菱地所の持つウェブメディアxtechでは、フェルマータ共同創業者のAminaさんとの対談も実施させていただきました。

上記のような活動や、またAsMama、陽と人といった会社へ経営支援をする中でも、多くの気づき学びを頂いており、自分たち自身もジェンダーレンズというものへの理解を深めています。単純に女性が困っているということではなく、そもそもの身体的な違いに関する知識の欠如、そこから来る未整備な社会環境、男性も女性も無意識のうちに持ってしまっているバイアス、バイアスを取り除くための教育環境の不足、一口にジェンダーレンズと言ってもさまざまな社会構造的な課題を含んでいます。これらを解決することは一朝一夕にはできず長い時間を必要とし、特定の一社が事業成長すれば解決するというものではないかもしれません。だからこそ、「Different Scale, Different Future」を掲げるZ&Cとしてファイナンス、クリエイティブ、GR、PRなどの力を用いて一緒に解決できることがあるのではないかと思っています。

PROFILE

ゼブラ編集部

「ゼブラ経営の体系化」を目指し、国内外、様々なセクターに関する情報を、一緒に考えやすい形に編集し、発信します。