2022.09.12 ZEBRAS

「Z世代とゼブラの架け橋になりたい」—Zebras and Companyの新卒&第1号社員として入社した阪本さんに実現したい未来を聞く


「Z世代とゼブラの架け橋になりたい」—Zebras and Companyの新卒&第1号社員として入社した阪本さんに実現したい未来を聞くのイメージ

2022年7月、Zebras and Company(以下、Z&C)は初めての社員を採用しました。入社したのは阪本菜(さかもと さい)さん。高校生まで日本で過ごし、West Virginia Wesleyan Collegeを卒業したのち、新卒第1号としてZ&Cに飛び込みました。

Z&Cで働くまで金融投資業界についてほとんど知らなかったという阪本さん。なぜ新卒のキャリアでZ&Cを選んだのか。初めての社員として日々感じている葛藤や仕事のやりがいとは。彼女が実現したい未来について伺いました。

「経済性と社会性の両立」というコンセプトに恋をした

——Z&Cへのご入社おめでとうございます。まずはZ&Cとの出会いについて教えてください。

Z&Cのことを初めて知ったのは、昨年(2021年)の7月。私がアメリカの大学に通っている時です。Twiterのタイムラインに偶然流れてきた設立記念イベントに参加し、ゼブラ企業の支援を通して「経済性と社会性を両立する」というコンセプトに心を打たれたんです。

「こんな仕事ができたらいいな」と思っていたことを、実際にやっている会社があることが嬉しくて、その日のうちに問い合わせをしました。阿座上さん(共同創業者・阿座上陽平)と話して、インターンとして関わることになったんです。

——Z&Cの考え方に共感したポイントを、もう少し詳しく聞かせてください。

小さい頃からずっと、資本主義的な考え方——特に利益の最大化だけを目指す考え方——に違和感を持っていたんです。例えば、広告業界の現状があります。本来広告の役割は、クリエイティブの力で、社会的意義があって多くの人が知ったほうがいいのに知られていないものを広げることのはず。

しかし、広告に掲載されている商品の中には、すでに売れているものや社会・環境にとって必要でないものも多くあります。広告業界で働きたいという思いもあったんですが、既存の構造を推し進めることへの懸念もありました。

その一方、NPOなどの社会活動にも課題を感じていました。アメリカのNPOでインターンを経験し、サステナブルな経営の難しさを実感したんです。経済性と社会性を両立できる仕事はないかと模索していました。

——資本主義的な考え方を否定はしないけれど、全面的に肯定することもできない、と。そう考えていた中でZ&Cと出会い、インターンを開始。入社に至った経緯を教えてください。

Z&Cは創業したばかりの会社だったので、関わり始めた当初は新卒として入社することはできないだろうと考えていました。2〜3年経験を積んでから就職できたらいいなと思い、アメリカで他の企業を探していたんです。

しかし、なかなか条件に合う仕事は見つかりませんでした。そもそもアメリカには新卒採用の文化がありません。LinkedInで50〜60社にコンタクトを送ってみたり、大学内のインターンやNPOの繋がりから就職先を探してみたりしましたが、うまくいきませんでした。

そんな時に阿座上さんから「社員を採用しようと思うんだけど、興味ある?」と聞かれました。Z&Cの採用がスタートし、新卒を採用する可能性があることを聞いたんです。

「ぜひ働かせて欲しい」と返答しました。だって、コンセプト自体に恋をしていたんですから。母国語が使えること、インパクト投資やブランディングの第一人者のみなさんと一緒に働けることも非常に魅力でした。それからさまざまな業務に関わらせていただくようになり、2022年3月末に内定をいただきました。

格差や差別を助長している社会構造を変えたい

——タイミングの良さも相まっての選択だったんですね。先程、「小さい頃から資本主義的な考え方に違和感があった」とお話されていましたが、そう考えるようになったきっかけはありますか?

小学生の頃に手塚治虫の漫画『火の鳥』を読んだことです。ご存知の方も多いと思いますが、火の鳥には資本主義や技術革新が進み過ぎた世界が崩壊していく様子が描かれています。

幼い私にとっては衝撃的な内容でした。「このまま社会を続けて行った先にこんな悲惨な未来が待っている。だったら、違うアプローチで社会を作るための仕事をしよう」。そう漠然と考えるようになったんです。

一方、資本主義やお金を稼ぐこと自体を否定していないのは、親の影響があるからです。好きな仕事をして、好きなものを食べ、好きなものを着られる豊かな生活に憧れを持っていました。

——小学生の頃にはすでに、今に通じる考え方を持っていたんですね。本格的にご自身のキャリアについて考え始めたのはいつからですか?

日本の高校を卒業してアメリカの大学に入学してからです。私の専攻はアート経営学、副専攻はジェンダー学でした。1年目にジェンダー学のクラスで「なぜステレオタイプは悪いのか?」を考える課題がでました。それが、私の価値観を大きく変えます。

ステレオタイプとは、無意識的に持っている固定観念のこと。それらの多くは育ってきた環境に依存します。授業を通して自分の人生を見つめ直した時に、私の認識がステレオタイプに大きく影響されていたということに気がつきました。

いかに自分が恵まれているのかを思い知りました。

それと同時に、世の中にある負の構造のことも知りました。この世界では、白人至上主義や父権制度の考え方がまだ根強く残り、経済格差も広がり続けています。社会構造が原因で本人の努力とは関係ないところで、苦しい思いをしている人たちがたくさんいることに初めて自分ごととして気づいたんです。

そう思った時、自分が与えてもらった機会や能力を社会に還元しなければならないと感じるようになりました。働く会社を選ぶにしても、社会的な負の構造を解消できるところにしようと決めたんです。

「柔軟な投融資のあり方」を知る

——なるほど、Z&Cのコンセプトに共感した理由がよく理解できました。Z&Cの一員として働き始めた今、想像していたものと近い仕事ができていると感じますか?

難しい質問ですね……。まだ、ひとりでできることは少なく、何もわからない状態です。社会に良い影響を出せているかと言われると、そこまで実感はありません。

ただ、Z&Cの仕事の意義深さや面白さはすごく感じているんです。社会性と経済性を両立させるゼブラ企業が、どんどん生まれている姿を直近で見ることができていますから。目の前のことを着実にこなして仕事ができるようになれば、私も、より良い社会を作ることに貢献できるだろうと思っています。

——実際に働いてみて、どんな気づきや学びがありましたか?

「お金の可能性」を知ったことが大きいですね。Z&Cに入るまでは、事業に必要なお金を集める投融資のかたちは、ある程度限られていると思っていました。しかし、「温かいお金の流れをつくる」ことを目指す群言堂さんとの協業などを見て、組織のあり方や目的に合わせて柔軟にデザインできることに気づきました。

Z&Cには「経済性と社会性を両立」を実現する具体的な事業があります。それを実行するだけの能力と想いを持っている人たちもいる。口だけではなく、行動で示してくれる先人たちがいることが、何よりも嬉しいことだと感じています。

ただ一方で、共同創業者3人と私、というチーム体制に少なからず不安も感じています。15年以上のキャリアのギャップがありますし、その中間になるような人がいるわけじゃないので。経験のない私に何ができるのか、どうやったら近づけるか、日々試行錯誤しているんです。

未経験だからこそ「新しい視点」をもたらせる

——確かに、新卒でいきなり入社するにはハードルの高い環境とも言えるかもしれませんね。そうした中でも、阪本さんが担っていきたい役割はありますか?

「ゼブラや金融業界のことを知らない」というのはある意味武器になるかもしれないと思っています。経験も専門知識もまだないからこそ、これまでとは違う視点をチームにもたらすことができるかな、と。

また、わからないことを素直に質問することで、業界ならではの考え方や知識の偏りを知らせるきっかけになれるかもしれません。業界内外問わず、多くのステークホルダーを巻き込みながら、ゼブラの考え方を広く伝えていくには、私のような立ち位置も必要なはずです。

——スキルや実績は後々身につけるとして、阪本さんという存在自体がすでに、チームにプラスの影響を与えていそうですね。

ジェンダー的な多様性ができたこともプラスに働いていると思います。いくら「ジェンダーレンズ投資をします」と掲げても、男性3人で活動していては、外からうがった見方をされることもありますよね。実際、関係者の方から「多様化が進んだ」と評価してもらうこともあり、そうした点で貢献ができそうだと感じています。

あとは、実現できたら一番いいと思っていることは、「Z世代とゼブラをつなぐ架け橋になること」です。同世代で、ゼブラ経営やインパクト投資の世界に関わっている人はほとんどいません。次の世代の人たちがこの業界に参入してくる時に、私が直面している「未経験だからわからない」という経験が役にたつはずです。

大きなことを言いつつも、今はただ目の前のことを着実にやっていくことしかできていません。ただ、この経験からさまざまなことを吸収することで、将来的には、ゼブラと業界外や次世代の人のタッチポイントになれたらと思っています。

編集・文:佐藤史紹
撮影:澤圭太

PROFILE

Fumiaki Sato

編集者・ライター・ファシリテーター。「人と組織の変容」を専門領域として、インタビューの企画・執筆・編集、オウンドメディアの立ち上げ、社内報の作成、ワークショップの開催を行う。趣味はキャンプとサウナとお笑い。