2023.12.14 ZEBRAS

今年のクリスマスギフトにゼブラな商品はいかが?世界各地で人気高まるゼブラなソックスブランド3選


今年のクリスマスギフトにゼブラな商品はいかが?世界各地で人気高まるゼブラなソックスブランド3選のイメージ
Image : Conscious Step Official Website

ギフトシーズンと切っても切れない存在「靴下」

特段温暖すぎない先進国に暮らす私たちの誰もが、1人最低20足は持っているとされる「靴下」。実際に今、この記事を読んでくださっている方のほとんどが、靴下を履いていらっしゃることと存じます。

基本的に靴の中に押し込められて目立たぬ存在の「靴下」ですが、1年のうちで唯一注目を浴びる日があるとすればクリスマスではないでしょうか。

(Image : unsplash)

キリスト教文化圏の「クリスマスストッキング」の伝統は、今からちょうど200年前(1823年)にアメリカの新聞で発表され、現代の私たちのサンタクロースのイメージを決定づけた詩「クリスマスのまえのばん」にすでに見て取れます。

なぜ靴下なのかは後ほどお話しするとして、サンタさんにギフトを入れてもらうための、もしくはデコレーションとしての大きなクリスマスストッキングは、前世紀の初頭にはすでに家庭の習慣となっていたようです。その後(戦後)、下着としての靴下の大量生産が軌道に乗るにつれ、思いやりを込めてぬくもりを贈るギフトとしても人気を得ていきます。

「無難なギフト」から「インパクトを込めて」ゼブラなソックスブランド続々

さてこのように長い歴史を経てギフトとして定番化していた靴下は、一時無難なギフトとして乱用され、「つまらないギフト」の代名詞となっていました。

しかし多くの人が毎日使うものだからこそ、また贈り物に最適だからこそ、そこにサステイナビリティを組み込んでインパクトを生み出そうとする数々のゼブラブランドの登場により、近年のギフトシーズンには再度「靴下」の市場が賑わうようになっています。

草分けはアメリカ発の「John’s crazy socks」

中でも草分け的存在はアメリカのダウン症を持つ高校生がお父さんと起業した「John’s crazy socks」。「幸せを広める」ことをミッションに、様々なソックスを製造・販売しています。

Johnさんとソックス(同社公式Facebookページより)

2016年の秋、高校の最終学年に在籍し、卒業後の進路についてリサーチを始めた創業者のJohn Croninさんは、自身のような障がいを持つ人に開かれたキャリアが非常に限られていることに気づきます。そこで父親のMarkさんに「一緒にビジネスをしよう」と提案し、フードトラックのアイディアを思いつくも、父子ともに料理が全くできないので断念。

どんなビジネスがいいか考えあぐねるうち、Johnさんが「クレイジーなソックスを売りたい」と言い始めました。3月21日の「世界ダウン症デー」には、ダウン症を起こす非定型の染色体を模して左右違う(もしくは奇抜な柄の)ソックスを履く習慣があるのですが、Johnさんはそれを楽しいと感じて、普段から奇抜な組み合わせでソックスを履いていました。

この「ジョンのクレイジーな靴下」は近しい人には有名でしたが、実はJohnさんは自分が履きたいような奇抜なデザインの靴下がなかなか見つからないことに不満を抱いていたのです。

ソックスが染色体に似た形をしていることから始まった習慣だそうです(Down Syndrome Development Trustサイトより)

このアイディアを聞いた、勤務先の廃業により失業していた父親のMarkさんも、「ものは試し」と開業に乗り出します。

ウェブショップを開設し、いくつかの商品を準備したのち、唯一の広告である30秒あまりのローファイビデオをFacebookに投稿してオープンすると、予想外の反響を呼んで初日だけで42件の注文が入りました。

Johnさんはすぐにその感謝を形にするアイディアを思いつきます。箱にはキャンディと直筆のお礼状を入れ(これは会社が成長した今でも続く同社のトレードマークとなっており、Johnさんは『Amazonは箱にキャンディを入れないのがちょっとね』と同業者として苦言を呈しています)、Markさんの運転する車で直々に配達したのです。

この顧客満足度にこだわるJohnさんの方針が支持を得て、配達に来たJohnさんと撮った写真や動画がSNSで拡散していくにつれて「John’s Crazy Socks」は話題となり、注文件数は初月総計で452件に。収益は1カ月で13,000ドル(約190万円)に上りました。

7年後の現在、企業価値は約400万ドル(約5.9億円)と見積もられ、現在までにジョージ・ブッシュ元アメリカ大統領や、カナダ首相ジャスティン・トルドー氏などのセレブが顧客リストに名を連ねたことも知名度を後押ししたと見られています。

同社のミッションは様々な「幸せ」

このような経緯から、「ビジネスが大当たりしたダウン症の起業家」という取り上げ方をされることの多いJohnさんですが、同社は企業として成長するのみならず、現在も様々な「幸せ」に取り組んでいます。

まずは同社の最も大きな柱である「還元」。会社の利益の5%を常にスペシャルオリンピックに寄付し、アメリカ自閉症協会、全米ダウン症協会、ウィリアムズ症候群協会といった様々な組織に現在までに30万ドル(約4,400万円)以上の寄付を行っています。

その他、同社で扱う4,000種類の靴下の中には、コラボデザインでニューロダイバーシティ、いじめ防止、犬猫レスキューや救急医療従事者への感謝など、あらゆる社会的メッセージを啓蒙するものが多数。売り上げの10%がそれぞれの関連団体に寄付されます。

同社を代表する世界ダウン症デーの日付とハートのデザイン(同社公式サイトより) 

また、従業員の半数以上はニューロダイバージェントを雇用。Johnさん自身が痛感した障がい者の雇用機会をめぐる厳しさと、近年都市部で特に悪化する労働力不足の問題から、様々な能力の特性の人に勤めてもらえるポジションを用意することも企業の強みと考えています。

Markさんは例として、在庫管理の仕事に障がい者を起用することがいかに問題ないかを語る際、「自分のバスケチームにレブロン・ジェームスを雇うとして、彼が微分積分やギリシャ語ができるかどうか気にしますか?なんでもはできなくていいのです」と表現しています。

その他にも、ニューロダイバージェントの人々のキャリアへの門を広げるため、各プラットフォームでの発信や、国会やその他の議会での演説や法改正の提案など、様々な啓蒙活動をしています。Johnさんの現在の肩書きは「最高幸福責任者」です。

エシカルソックスの代名詞「Conscious Step」

(同社公式Facebookページより)

エシカルなソックスの代名詞といえばアメリカ発の「Conscious Step」。小児がん研究サポートや環境保全系、宇宙開発まで、あらゆる社会課題に取り組む団体を応援する資金を調達するための、それぞれオリジナルデザインのソックスを製造・販売しています。

創業者のPrashant Mehta氏は元々データ管理やアナリスト系のキャリアを積んだ後、着実にサステイナビリティにインパクトを与えられるビジネスとして同社を起業したというミッション先行型企業。

インドで製造している同社のソックスは、基本的にすべてオーガニック・フェアトレードのコットンを使用し、耐久性を重視したデザイン。また、労働環境の改善などバリューチェーン全体のエシカルにも取り組んでいます。

小児がん、住宅難、熱帯雨林保護、水の安全保障、平等など、取り組む社会課題のバラエティが非常に広い(同社公式サイトより)

現在までに計112万ドル(約1億6,500万円)あまりを各パートナーのNPOに寄付しており、特に女性虐待防止メッセージを込めたオレンジのソックスが有名です。

お気に入りの動物の靴下を履くと保護もできる「Bare Kind」

同社公式Facebookページより)

最後にご紹介するのは、イギリス発の「Bare Kind」。2023年10月にB-corpの仲間入りをした新顔です。

同社の特長は、様々な絶滅危惧種の動物がデザインされたラインナップ。ソックスを購入すると、描かれている動物を保護する団体に売り上げの一割が寄付されるシステムで、好きな動物のソックスを楽しむのと、同時に保護活動にも貢献できる点が人気を集めています。生地には、通気性と抗菌性に優れ、綿よりもはるかに環境への負担が少ない竹素材を採用。

同社公式Facebookページより)

2018年に同社をスタートしたLucy Jeffreyさんは元々金融系の専門家でしたが、子どものころから獣医になりたいと思うほどの動物好きだったと言います。同社を立ち上げたあと、金属製のストロー、サステイナブルなTシャツやトートバッグなど、最も動物や生態系に影響を与えられるプロダクトを求めて試行錯誤しましたが、結局、「みんながどのみち新品で購入する必要があるもの」という理由で「靴下」に落ち着いたとのこと。

なぜ靴下なの? 起源は聖ニコラス

最後に、冒頭で少し触れた「なぜサンタクロースがプレゼントを入れるのが靴下か」というお話を。

その起源は、サンタクロースのモデルとなったローマ帝国時代の聖人「聖ニコラス」(AD270-352?)のエピソードにあるといいます。とある落ちぶれた元商人の男が妻を失くして貧困にあえぎ、助けを求めることもできず、3人の娘を売ろうと思い詰めているのを知った聖ニコラスが、夜中にこっそり煙突から金貨の詰まったコインを投げ入れました。それが、乾かすために暖炉に吊るしてあった3足の娘の靴下に入り、朝起きて靴下をはこうとした娘はビックリ。家族は難を免れ、娘たちはその金貨を持参金に幸せな結婚をします。

1425年の聖ニコラスを描いた作品(Wikipediaより)

そんな聖ニコラスの伝説にのっとり、大切な人に贈り物をするクリスマス。しかし一方で、もらってガッカリの不要なクリスマスギフトに、アメリカだけでも毎年80億ドル(約1兆円強)以上が費やされているとする調査も。お金はもとより、その誰も喜んでいないギフトのライフサイクルがフットプリントを残し、次の世代にツケを回しているとしたら悲しいことです。

クリスマスのみならず年末年始、バレンタインとなにかと贈り物をする機会の多いこの季節。よりよい未来へのインパクトを添えたゼブラなソックスは、素敵なギフトのアイディアかもしれません。

文:ウルセム幸子

編集:岡徳之(Livit)http://livit.media/

PROFILE

ウルセム幸子

3児の母、元学校勤務心理士。出産を機に幸福感の高い国民の作り方を探るため、夫の故郷オランダに移住。現在執筆、翻訳、日本語教育など言語系オールラウンダーとして奔走中。