2022.02.03 INSIGHT

ゼブラは地方に眠る。ぼくらが「陽と人」小林味愛さんに投資を決めた“非合理”という可能性


ゼブラは地方に眠る。ぼくらが「陽と人」小林味愛さんに投資を決めた“非合理”という可能性のイメージ

福島県国見町は、宮城県との県境にある、人口約8000人の小さな町です。主産業は農業。特に果物の栽培が盛んで、桃は町村レベルでは日本一の生産量を誇ります。

そんな国見町に2017年、「陽と人(ひとびと)」という、ちょっと変わった名前のベンチャー企業が誕生しました。代表の小林味愛さんは、現在34歳の一児の母。元官僚という異色のキャリア、東京と国見町の二拠点居住など、さまざまな文脈で、メディアからも注目が集まっています。

株式会社「陽と人」代表 小林味愛さん と Z&C 陶山さん

ひとことで言うなら、「陽と人」は、同町に住む人たちの困りごとを持続的に解決することを目的に立ち上げられた会社です。

国見町の農家の人たちは(おそらくは全国のほかの地域でも同様でしょうが)、栽培・収穫の手間のわりに低所得。高齢化が進み、後継者不足も深刻化していました。そこで「陽と人」はまず、これまでは規格外品として廃棄されていた桃を全量買取し、その日のうちに東京に届く物流を作ることで、農家の人たちの所得向上を実現しようとします。

桃で一定の成功を収めると、次は柿です。地元の名産・あんぽ柿を作る際に捨てられていた柿の皮に着目し、ニオイのケアや肌の引き締め効果があると言われるカキタンニンという成分を活用した、女性のデリケートゾーンケア製品を開発。自社ブランド「明日 わたしは柿の木にのぼる」は、「サスティナブルコスメアワード2020」で銀賞に輝くなど、業界から高い評価を受けています。

柿の果皮から抽出した成分をはじめ、厳選した植物由来成分を配合した「フェミニン ウォッシュ」(350ml/50ml)、「フェミニン オイル」、「フェミニン セラム」、「フェミニン ミスト」、「フェミニン ミルク」の全5種類。公式ECサイト:https://store.ashita-kaki.com/

要するに、これまでは価値がないものとして捨てられていたものに、クリエイティブの力を注ぎ込むことにより価値化し、農家の暮らしを持続可能なものとすることに取り組んでいるのが、「陽と人」という会社なのです。

さて、ぼくたちゼブラアンドカンパニー(以下、Z&C)はこのほど、この「陽と人」に1000万円の投資をさせていただくこととなりました。これは、Z&Cとしての投資第1号になります。

この記事では、「陽と人」という会社、そして小林味愛さんという起業家を詳しくご紹介することを通じて、ぼくらが考える「ゼブラ企業」とは何かを知っていただきたいと考えています。また、「陽と人」のようなゼブラ企業を資金面で支援するべく、ぼくらが提案する新たな投資の仕組みについても、併せてご説明します。

人の役に立つすべを探し続けた10年

写真右:Z&C共同創業者 / 代表取締役の陶山祐司(すやま・ゆうじ)。本記事の聞き手も担当しています

味愛さんは大学卒業後、衆議院調査局に入局。民間のコンサルティング会社勤務を経て、最初はたった一人で「陽と人」を創業しました。生まれは東京。福島に親戚がいるわけでもありません。そんな味愛さんがなぜ国見町で起業することになったのでしょうか。

私が衆議院調査局で働き始めたのは2010年。その社会人1年目の終わりに、東日本大震災が起こりました。国会には常時テレビ局各局の放送が流れているんですけど、そこに悲惨な映像が映し出されていて。

いてもたってもいられず、休暇をもらって震災ボランティアへ。でも、当時はまだ、がれき処理などの力作業が必要な時期。全然役に立てなくって。

「自分の不得意なことで役に立とうとしても意味がないんだ」と痛感しましたし、それからは「自分の得意なことってなんだろう?」「それが見つかった時に、福島で何かできたらいいな」と考えるようになりました。

公務員として約5年勤めたあと、民間のコンサル会社に転職。そこでも福島の案件を担当する機会が比較的多かった……というより、自分から志願してやらせてもらってました。

でも結局、会社が見ているのは「いくらの仕事を持ってくるか」という一点なんですよ。私としては、福島の人たちに喜んでもらいたくてやろうとするわけだけれど、求められるのは案件の規模であって、社会的なインパクトの大きさじゃない。

思うように役に立てない一方で、私自身は、分不相応なまでの高額な報酬をもらい続けている。まるで悪いことをしているみたいな気持ちになってしまって。本当にストレスで、この3年間はずっと「10円ハゲ」を二つも抱えていました。

「これも勉強」と自分に言い聞かせて騙し騙しやっていたけれど、ついに耐えられなくなって、独立を決意。「大したことはできないかもしれないけど、やれるだけやってみよう」と思って立ち上げたのが、「陽と人」という会社です。

だから、最初は事業計画さえなかった。農家の仕事の手伝いをさせてもらいながら、いろいろな話を聞いて、「どうやったら役に立てるだろう」「何をすれば喜んでもらえるかな」と、解決すべき課題を探すところからのスタートで。

地域の困りごとを解決しながら、一方で自分も食べていける、社会性と経済性を両立させる道を探す日々が、ここから始まりました。

真の「女性活躍」社会を見据えて

そうやって農家の悩みを一つひとつ聞いていく中で生まれたのが、現在注力する自社ブランド「明日 わたしは柿の木にのぼる」でした。このブランドには、農家の暮らしの持続可能性に加えて、「女性活躍」という、味愛さん自身の経験とも紐づいたもう一つのテーマがあるといいます。

社会人になった2010年ごろには「女性活躍」ということが言われ始めていました。

でもその割には、子供のできた先輩が「だから30代の女は使えないんだ」と周りに言われているのを聞いたし。満員電車で妊婦さんが席を譲られているところもほとんど見たことがなかった。「活躍しろ」という一方で、「少子化だからもっと子供を産め」とも言う。ちょっと社会が女性に対して求めすぎじゃない?って。

そうすると現実的には、子供を産まないで出世するか、子供を産みつつ、出世はあきらめて働き方をセーブするかの二択しかありませんでした。両立できているのは、親のサポートなど、よっぽど環境に恵まれている一部の人だけ。それを指して「女性活躍のモデル」と言われる社会に生きること自体が苦しかった。

そのころの私は、男性が作り上げたいまの企業文化の中で生き抜き、認められるためには、男性よりも強く働く以外にない、と思っていました。実際、同期の誰よりもたくさん作業をしていたし、勉強もしていたと思います。

でも、若いうちはそれで良くても、ずっとやり続けるのは本当に苦しい。女性の場合は、その無理が健康問題としてわかりやすく顕在化してくるんです。働いている女性の8割は、生理になんらかの不調を抱えているとも言われている。私自身もその一人でした。

周りの人に対してだって、だんだんと優しくできなくなってくる。「これって全然ウェルビーイングじゃないよな」と思いました。そこまでして自分を押し殺して、耐えて耐えて耐え抜いて働くのが、本当の女性活躍の姿なのか? 私はそういう社会を変えたい、と思いました。

けれども、社会が変わっていくのには時間がかかる。であれば、まずは自分の心と体の状態を知って、自分を大事にできる個人を一人ずつでも増やしていこう。一人でも多くの人がそういう気づきを得ることができたなら、それは女性にとって生きやすい社会にもつながっていくはず。

このブランドには、そういう思いを込めています。

ちょっと変わったブランド名には、「どんな時も、上を向いて意思をもち、自分らしい選択をしていたい」という女性のライフスタイルへの想いが込められている

社会性と経済性を両立できるポテンシャル

プロダクトを通じて女性を支援したいという思いと、福島の農家の暮らしを持続可能なものにしたいという思い。この二つが結びついたのは、偶然によるものでした。「奇跡と言ってもいいくらい」と、味愛さんは言います。

桃に関してなんとか価値化の目処がついたタイミングで、同じ農家さんから「味愛ちゃん、次は『あんぽ柿』の季節だよ」と言われて。

あんぽ柿はそもそも加工品なので、規格外品という概念がないんですよ。だから、桃と同じように規格外品を買い取って流通させてという方法では課題を解決できない。それで、官僚時代に足繁く通った国会図書館へ行って、柿の論文を片っ端から調べました。

そうすると、柿の実に含まれているカキタンニンというポリフェノールの一種に、においケアとか毛穴の引き締め効果があることが、もう実証されていたんです。

じゃあ、国見町の柿の品種で試したらどうなるのか。完熟した柿だとどうか? まだ青い実でやったらどうか……。そうやっていろいろと実験を重ねた中の一つに、柿の皮がありました。

(写真提供:小林味愛さん)

あんぽ柿を作る時に剥いた皮。いまは全部捨てられているんだけれど、おばあちゃんに聞くと、「昔は食料がなかったから、干して子供のおやつにしていた」と。

「果物は皮と実の間に一番栄養がある」というのはよく聞く話ですし、何かあるはずと思って成分分析やさまざまな実験をしていったら、結果的に皮に一番多くのタンニンが含まれていることがわかって。「だったら柿の皮から作れるじゃん!」となりました。

出来上がるまでの3年間で、何十回と試作もしたし、失敗も山ほどしてますよ。でも、完成したこの商品に関しては、私自身がマジでいいと思っているんです。「このテクスチャーが気に食わない」「この香りじゃないんだよな〜」と散々やった結果、「これは私も欲しい!」と心から思えるものが出来上がった。

もちろん、それが世間から評価されるかなんてわからなかったですけど。でも、少なくとも人を騙して売る必要のないものなのは間違いないと言えたから。

ぼくらZ&Cが「陽と人」への投資を決めた大きな理由も、このプロダクトが持つポテンシャルを高く評価しているからにほかなりません。持続可能性と女性活躍というブランドのコンセプトや、掲げるミッションへの共感があるのは当然ですが、経済性と両立できていなければ、大きな社会的インパクトを残すことは難しい。

「明日 わたしは柿の木にのぼる」はこれまで味愛さんがイベントやお店一つひとつへ大切に販売してきていて、いわゆるマーケティングにあまり手をつけていない状態でした。それでいて専門家からここまでの評価を受け、消費者からも支持されているのは、商品の持つポテンシャル以外の何物でもないとぼくらは考えています。

ゼブラ企業支援のための新たな仕組み

しかし、これまで「陽と人」のような会社を資金面で支援するのは難しいことでした。なぜなら、既存の融資・投資の仕組みがそのようにできていないからです。

銀行の融資は、ある程度の実績に裏打ちされた企業の、リスクが低い資金使途に対して提供されているものです。そのため、成長資金にあてるために、創業間もない企業や中小企業が融資を受けるのは難しいのが実情です。

また、ベンチャー投資に関していうと、投資家がベンチャー企業に資金提供する大きな理由は、その企業がIPOやM&Aすることにより、キャピタルゲインを得るためと言えます。キャピタルゲインとは、その企業の株式を購入し、株価が上昇した際にその株式を売って得る利益のこと。ベンチャー投資は、早い段階の企業に出資し、IPOを目指して15倍以上のリターンを目指します。

企業が投資を受けるには、3〜5年間で数10億〜100億円規模へと急成長を遂げてIPOを目指すことが前提となっており、そうした事業計画に起業家がコミットする必要があります。また、IPO後も、新しく株主になった個人投資家・機関投資家から株主価値の最大化を求められ、利益の最大化を目指すことになります。

しかし、改めて言うまでもなく、味愛さんは利益を最大化したくて会社を経営しているわけではありません。農家のため、従業員のため、社会のためを思って事業をやっている。もちろん、利益を生むことで新しい投資をすることもできますし、事業継続のためには利益を生み出すことが前提になります。ただし、それ自体は目的ではないのです。そうした考え方だと、どうしても既存の金融の仕組みや考え方とは合わない部分が出てきてしまいます。

陽と人が目指す社会のビジョン。眠ったままの地域資源を見つけ、価値あるものへ変える。そして地域と都市で、しあわせが循環する社会をつくることを目指している

「陽と人」は、創業して数年の若い会社です。もちろん、起業家の中には、創業当初からIPOやM&Aまで見据えている人もいますが、特に味愛さんのように自分の体験から起業する人は、最初からそこまで考えていないのが普通です。「IPOしない」と決めているということではなく、創業間もない時点で、IPOすることの意味をしっかりと理解した上で「IPOを目指す」と決めることが難しい、ということです。

ものを作る、ものを磨く……そういうさまざまなプロセスを経て、ようやくものが売れるようになるわけです。IPOやM&Aといったことよりも、目の前にコミットすべきことが山ほどある。ゼブラか、ユニコーンかといった話とは関係なく、創業して間もない企業には、そうやって必死に成長していくといったところがある。「陽と人」は、まさにそういうステージにある会社だと思っています。

だとすれば、こうした企業を支援するためには、その企業が置かれたフェーズや、その時点でコミットすべきことをしっかりと理解した上で、それに合った形でお金を提供できる新たな仕組みが必要でしょう。

そこで我々は、「陽と人」の持続的な経営と発展をサポートしていくため、現時点で合意できる目標を定めつつ、継続して、味愛さんやほかの株主と対話を重ねて目標を改定していく。そのように一緒に事業を進めていくことができないかと考えました。

多様なイグジットやリターンの選択肢を残しつつ、経営者やほかの株主と毎年事業計画を議論し、併せて、株主還元についても対話していこうと明文化しています。

創業経営者は、その会社の株式の大多数を保有していることが多く、そうした企業に出資する場合には、これまではIPOやM&Aによるイグジットを目指すVC型の投資スキームが一般的でした。しかし、すでに述べたように、すべての会社がIPOやM&Aを目指しているわけではありません。

そこで今回は、一定の目標を達成した際には、経営株主以外の株主の合意によって、会社の経営に影響を与えない範囲での自社株買いを通じた株主還元がなされるような投資スキームを採り入れることにしました。

これにより、経営者が将来のイグジットの形や成長のあり方を柔軟に選択する余地を残しつつ、投資家は投資先企業が成長した際の株主還元を担保できることになります。

また、自社株買いであれば、配当と違って、個々の株主のその時々の状況・ニーズに応じて買い取り額を調整できるため、そうした観点からも、後々の柔軟な調整が可能になります。

普通ではなく王道。その徹底ぶりについて

改めて、なぜ「陽と人」がZ&Cとしての投資先第1号でなければならなかったのか。ぼくらはゼブラ企業の特徴として4つのポイントを挙げていますが、それを並べただけでは抽象的で理解されづらい。具体的なモデルとして示す必要がありました。

「ゼブラ企業はどこにいるのか?」と考えた時に、そのモデルには何種類かあると思っています。そのうちの一つが「陽と人」のような地方の企業です。

地方の多くの企業は、ゼロから起業する人にしても、先代から引き継いだ2代目以降の経営者にしても、急成長して時価総額を何倍にしたい、利益を最大化したいと考えて経営しているわけではありません。その地域の社会に溶け込み、持続的に経営し、次の世代へとその事業を引き継いでいくことを考えています。

こうした企業を支援する動きを大きなうねりとするためには、ぼくら自身がそれをやるだけでなく、社会のさまざまな主体に意識や行動を変えてもらう必要があります。そのためには、わかりやすいことや、真似しやすいことが重要になる。

「陽と人」がやっていることは、ビジネスモデルとしては「ものを作って売る」という、ごく一般的なもの。一部の人にしかできない、特別なことをやっているわけではありません。それでいて社会性と経済性を両立できているのは、モデルとして最適と言えるのではないでしょうか。「陽と人」をモデルに、意識や行動を変える経営者が増えてほしいという思いがあります。

他方、投資家の意識や行動も変えていく必要があります。たとえば、地方の金融機関には、志はあるのだけれど、急速な時代の変化を前に、どうやって良い企業を見つけ、支援できるかがわからずに苦しんでいるところがあります。

ぼくらが地方の企業を支援し、成功するモデルを示すことができれば、そうした人たちが追随してくれるかもしれません。そういう意味でも、「陽と人」こそが、ぼくらの投資先第1号としてふさわしいと考えたわけです。

ところで、先ほど「陽と人」を真似のしやすい「普通の企業」と表現しましたが、「陽と人」は本当に普通の企業なのでしょうか。

(写真提供:小林味愛さん)

味愛さんと一緒に国見町を訪問した際、驚かされたことがありました。取引先である農家の家を訪れると、味愛さんは平気で、おばあさんと1時間、2時間と話し込むのです。最初は仕事の話をしているのだけれど、次第に子育ての話、孫の話と”脱線”が続き、一向に終わる気配を見せませんでした。

また、メディアに取り上げられることが増え、以前とは比べ物にならないくらいに引き合いが増えたいまでも、味愛さんと社員の皆さんは購入者一人ひとりに、手書きのお礼の手紙を書いて送っています。そのため、いつまでたっても腱鞘炎が癒えません。

こうした時間の使い方は、従来の経営の常識に照らせば、非合理にも映ります。しかし、味愛さんは当たり前のこと、ごく自然のこととして、これらを実践しているのです。彼女は次のように語っています。

そういう時間が純粋に楽しいんですよ。だから、一人で行ったら(世間話は)とてもじゃないけど、2時間ではおさまらない。

上司、同僚、取引相手……。東京にいると、あくまで仕事の中で関係している人がほとんどじゃないですか。私には、それを超えられている関係性がすごく嬉しくて。プライベートと仕事が融合された人間関係。どっちにも欠かせないみたいな人との付き合いができていること自体が、私にとっては幸せなんです。

非合理な行動として映るというのは、あくまで短期的な利益の最大化を目的とした時の話。閉じられた地方社会で持続的にビジネスに取り組むには、信頼こそが不可欠になります。ですから、それは経済的な利益とも矛盾しない。長期で見れば、そちらの方が合理的と言えるのです。

その意味では、味愛さんの振る舞いは大いに理にかなっている。「普通」のビジネスモデルと言ってしまいましたが、「王道」と言い換えた方が正しいのかもしれません。それをこれでもかと徹底しているのが、「陽と人」という会社なのです。

東京と行き来する私だからできること

「陽と人」が目指すのは、国見町に持続可能な社会を作ること。会社として目指す姿は、その社会に欠かせない機能として残ることです。そのために味愛さんはいま、住まいのある東京と会社のある福島を行き来する二拠点生活を送っています。

「地域づくりは、そこに腰を据えなければできないもの」とよく言われるところですが、「私はそうは思わない」と味愛さんは言います。

私って環境に影響されやすい人なんですよ。だから東京にいた時は、東京の価値観にすごく引っ張られてしまっていた。「私たちの周りでは年収はこれくらい」とか、「住むのは世田谷近辺で」とか。給料を上げるべく頑張るのが当たり前だし、満員電車に耐えるのも当たり前。

それがいいこと、それがウェルビーイングだと思っていたんです。でも、実際はものすごく苦しかった。

(写真提供:小林味愛さん)

福島に来たことで、すごく楽になった部分があります。たとえば、福島では子供がすごく歓迎される。東京にいた時は、妊娠したり、子供を産んで育休を取ったりするのにも気がひけるという状態でした。福島では子供がかわいがられるし、妊娠したら「重いものなんて持つな」と言って、全部手伝ってくれました

東京で「植物」と言えば、ビルとビルの間にある「グリーン」じゃないですか。でも、当然ですけど、植物って一個一個違うし、それぞれが生きている。福島に来たことで、自然とともに生きるとはこういうことなのかというのも味わえたし、人間らしさを取り戻すことができたとも感じています。

けれども、だからと言って全面的に福島の方がいいとは思わない。たとえば、閉じられた社会であるがゆえに、東京と比べて、学歴・経歴がいまだに絶対的な価値観として重んじられていることも多いです。どこの高校に進み、どこの会社に勤めるかがすべて。そのせいで子供の心が壊れていくみたいなこともある。

東京には東京の良さがあります。市場が大きいこと。情報が早いこと。いろいろな人と出会えるという多様性なんて、まさに東京ならではですよね。

だから、どちらが正しいとかって話じゃない。そして、どっぷりと浸かるとそこの価値観にとらわれてしまうのが私という人間だから。むしろ両方に片足ずつ突っ込み、どちらの価値観にも染まり切らず、両者をつなぐ立場だからこそ生み出せる価値がある。それが私の役割であり、私のウェルビーイングだと思っているんです。

写真右から、Z&C創業メンバーの阿座上陽平、田淵良敬(撮影:Huuuu)

最後までお読みいただきありがとうございました。
今回の投資で検討した内容を基にしたタームシートも公開しています。
LIFE type1 (将来の公正のための長期的投資スキーム 試作1)ダウンロード
新しい投資家と経営者と社会の関係性作りの一助になれれば幸いです。

取材・執筆:鈴木陸夫
撮影:西  優紀美
編集:Huuuu

PROFILE

ゼブラ編集部

「ゼブラ経営の体系化」を目指し、国内外、様々なセクターに関する情報を、一緒に考えやすい形に編集し、発信します。