2023.01.20 ZEBRAS INSIGHT
ゼブラアンドカンパニー2023年ご挨拶 2022年の振り返りと2023年のゼブラ企業を取り巻くグローバルの動き
みなさま、新年あけましておめでとうございます。ゼブラアンドカンパニー(以下、Z&C)共同創業者の田淵です。
2021年3月に創業したZ&Cにとって昨年は2年目の年となりました。振り返ってみて昨年も多くの活動をおこなったと感じています。また、運よく私がZebras Unite(以下、ZU)の社外役員となれたこともあり、ZUのアメリカの動きや世界の動きに関する解像度も上がりました。日頃からお世話になっているみなさまへ、一年間のZ&Cの活動と、昨年一年間を通じて感じたゼブラ企業を取り巻く(特にグローバルな)動きについてご報告すると共に、今年の意気込みについて記しておきたいと思います。
2022年のZ&Cの活動
投資事業
昨年、新年の挨拶の中で2022年の取り組みとして投資活動の加速を記しましたが、昨年は投資を3件実行しました。最初の投資として福島への地方インパクトとジェンダーイノベーションを目指す「株式会社陽と人」へ3月に投資を実行しました。本投資後にはその要素を雛形化しLIFEと名づけて一般公開しその直後に開催したオンライン勉強会では約100人の方にご参加いただきました。2社目には5月に、ミャンマーで物資の足りない地域へ配送サービスを行う日本の企業へ投資実行。Z&Cの資金調達サポートプロジェクトの「Finance for Purpose」としてご支援してきた企業へZ&Cからも投資させていただきました。当該企業の資金調達全体として、Z&C以外にもさまざまな企業から出資、融資、助成金を組み合わせてコロナ禍真っ只中にもかかわらず1億円以上の資金を集めました。3社目は、日本の研究者の知見活用、新たな方法での知の共有に挑む株式会社エッセンスへ7月に投資を実行。組合型株式会社という新たなガバナンス形態を模索している企業へ株主の一社として参画することになりました。
ムーブメント・コミュニティづくり
2月に日本で初めての本格的なゼブラ企業に関するイベント、ZEBRAHOODをオンラインで開催し30人以上の登壇者、100人以上の参加者に来ていただきました。
インパクトを促進するための協業
今年度、長野県塩尻市、SUNABAとともに起業家と投資家のマッチング及び支援プログラムを設計・実施しています。今後他の地域でもゼブラ経営/投資を加速させるために参考にできるような仕組みづくりができたのではないかと思います。その他にも多くの方と協働・対話をさせていただいた一年でした(昨年一年間で数百の企業/組織と接点を持たせていただき、改めてみなさまから支えていただいていることを痛感しています)。
ゼブラ企業を取り巻くグローバルな動き
昨年は、コロナ以来一度も行っていなかった海外へも行き始めました。3月には東アジア地区で審査員長を務めさせていただいているCartier Women’s Initiativeの15周年イベントに出席するためにドバイへ、6月には2年ぶりにリアルで開催されたAVPN(Asian Venture Philanthropy Network)に参加するためにインドネシアのバリ島にいき、11月にはZUの理事会出席のためにカリフォルニアへ行きました。そのような一年間で感じた投資環境・ゼブラ企業を取り巻く変化について簡単に書きたいと思います。
1. アンチESG投資の広がりーアメリカを中心とする分断の広まり
アメリカでは、政権を中心とする分断がおきており、11月のアメリカ滞在中には多くのアメリカ人から分断に関する話を聞きました。民主党、共和党の両党で極端な政策が目立ち、一般市民の多くは非常に危機感を抱いており、アメリカから移住することを考えている人もたくさんいるようです。
さらには、アメリカでは、アンチESG投資の動きが広まっています。この発端は、上述したアメリカの政権・政策が分断される中で、2021年に共和党州知事のいるテキサス州でアンチESGの州法が制定されたことでした。これはテキサス州は石油やガスなどの化石燃料への投資を避ける金融機関とは取引しないというものです。昨年には、18の州でESG投資を行う金融機関への制限がかけられる州法が提案あるいは制定されました。フロリダ州がESGやインパクト投資を推進するブラックロックから2,000億円以上の資金を引き上げると発表したのは記憶に新しいところです。アメリカのESGやインパクト投資業界にいる人の最も大きな懸念の一つだと言われており、今後も目が離せなさそうです。
2. Missing the middle
6月にAVPNに参加した後、同様にゼブラ企業的な既存のベンチャーキャピタルではカバーされない領域の起業家支援の仕組みを作ろうとしている多くの方と話したり勉強会に参加する機会がありました。ZUとも協働しているSecond MuseやアメリカのAspen Network Development Entrepreneurs (ANDE) 、東南アジアの投資家たちが含まれます。勉強会には国を跨いだ10社以上が集まっており、ゼブラ企業的な企業をどう支援するかというテーマと動きは世界を跨いで起こっていることを感じました。
3:世界のゼブラ企業の動き
昨年12月にアメリカのZUが新たなマニフェストをMedium上で発表し、Community、Capital、Cultureの三つの柱を中心に活動を進めていこうということが書かれていました。これには、資金コミュニティ、文化を一緒に作っていくことがパラダイムシフトを生み出すという考えがベースにあります。特に注目しているのは、3つの柱中のCapitalにおいて、アメリカでInclusive Capital Collective (ICC) という新たな資金提供の仕組みを開発したことです。これは、複数の財団や政府の支援を受け、特に有色人種や先住民などがいるアメリカのコミュニティ向けに投資、融資、助成金などをニーズに応じて提供し、他の資金提供者の資金を呼び込もうというカタリティックキャピタルを提供する仕組みです。
またCommunity、Cultureの面では、各国チャプターやパートナーとのコミュニティづくりを促進し、所有とガバナンスについて協同組合型の良い点を取り入れた新しい文化(Culture)を作るため、ZU内でもソシオクラシーと呼ばれる新たなガバナンスの仕組みを取り入れたり、カリフォルニアのグリーンバレーファームのガバナンス課題へのアドバイスを提供しています。
ZUが立てた3つの柱がどのように変化を生み出すのか、引き続き注目し、日本でも特徴的な活動を紹介していきたいと思います。
3年目に向けて
このように、2022年もさまざまな動きがあった一年でしたが、2023年も総じてゼブラ企業にとっては引き続き追い風だと感じています。昨年、あるいは設立から2年弱を振り返ってみて、私たち自身も非常に多くの方と対話をさせてきていただいたことを再認識しました。改めて、仲間づくりの重要性を意識するとともに、これだけの方に共感いただいたり、協働しようとしてくれることがゼブラ企業やZ&Cの一つのユニークネスなのではないかということを強く感じています。今年は、前述した昨年のZEBRAHOODの内容をまとめた本を出版予定であり、そこにもイベントに参加してくれた仲間の方達の素晴らしい対談内容が記されていますので、是非手にとって読んで見ていただけたらと思います。
今年は3年目を迎えますが、企業も3代目が重要と言われるように、3期目は真価を問われる年だと思います。投資、経営支援、協業など2年間で行ってきたさまざまな活動、自分たちの世の中への提供価値を改めて振り返り、ゼブラ企業・ゼブラ経営の普及に何がレバレッジポイントとなるのかを見極め、楽しく仲間を増やしながら、さらなる飛躍の年にできるように取り組みたいと思います。
PROFILE
ゼブラ編集部
「ゼブラ経営の体系化」を目指し、国内外、様々なセクターに関する情報を、一緒に考えやすい形に編集し、発信します。