2023.03.20 ZEBRAS

【創業2周年記念】3期目のZ&Cが目指すのは、ゼブラコミュニティーの化学反応を促進する「カタリスト」という在り方


【創業2周年記念】3期目のZ&Cが目指すのは、ゼブラコミュニティーの化学反応を促進する「カタリスト」という在り方のイメージ

2023年3月、株式会社Zebras and Company(以下、Z&C)は創業2周年を迎えました。ゼブラ経営の社会実装の一歩目として、ゼブラ企業への投資に力を入れた2期目。無事3社に実行し、いづれも順調な滑り出しを見せています。

また、共同創業者の田淵 良敬さんがZebras Unite(*1)の社外役員に選出されました。ゼブラに関する世界の動きの解像度が高まっています。さらに、初の新卒社員を迎え、仕事の進め方や組織内のコミュニケーションにも変化が生まれました。

多くの方の支えもあり、具体的な実績を示すことができたこの1年を、Z&Cのメンバーはどのように捉えているのでしょうか。事業における手応えや学び、組織カルチャーの変化、そして3期目の抱負を聞きました。

シマウマのように “群れ” を成しはじめたゼブラ企業

——1周年の対談企画ぶりにお話を伺います。まずは、この1年間の事業面における変化や手応えを教えてください。

田淵 良敬(以下、田淵)さん:2期目はゼブラ企業への投資に力を入れてきました。2022年3月には、投資第一号として福島への地域インパクトとジェンダーイノベーションを目指す「株式会社陽と人」に実行。続いて、5月にはミャンマーで物資の足りない地域へ配送サービスを行う日本企業へ、7月には日本の研究者の知見活用、新たな方法での知の共有に挑む株式会社エッセンスへ投資を実行しました。

田淵さん

阿座上 陽平(以下、阿座上)さん:「陽と人」は、福島県国見町の特産品であるあんぽ柿を使用した、オーガニックスキンケアコスメ「明日 わたしは柿の木にのぼる」を運営しています。Z&Cは投資だけではなく、ブランドのマーケティング戦略を支援するとともに、企業のキャッシュフローなど、財務的な部分のアドバイスもしています。大きな手応えを感じたのは、代表の小林味愛さんのユニークな発想をエンパワーメントしてきたことで、出資前には「想像していなかった取り組み」が始まったことです。

令和3年度、4年度経済産業省「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」の採択事業として、女性の身体について理解するハンドブックやワークショップを開催する実証事業が開始しました。これは、もともと小林さんが趣味でやっていた活動に僕らが価値を感じて、展開の方法を議論してきた結果。陽と人の事業が広がることで、農家さんや女性の悩みが解決するということ以上に、より大きく社会に働きかけられる可能性を感じました。

阿座上さん

——ゼブラ企業的なマインドを持つ経営者とZ&Cの知見が合わさって、想像していなかった展開が生まれたんですね。

陶山 祐司(以下、陶山)さん:その他の経営支援先なども事業が伸びており、僕らが具体的に貢献できることを実感しています。また、この1年は、最終的に投資に至らなかったところも含め、さまざまな企業のデューデリジェンスを実施しました。そうしたなかで、ゼブラ企業のコンセプトにフィットする企業がたくさんあることを確信したんです。

田淵さん:約300の企業・個人とお会いして、ほとんどの方がコンセプトに共感してくれましたね。多くの創業2年で出資3件というと、決して多くはないかもしれません。ただ、その裏側に損得だけではない部分でつながる「仲間」がたくさんできたことは、僕らの大きな強み。そのことをZ&Cの株主に伝えた際には、「ゼブラ企業らしい”群れ”の感じが出てきてるね!」と評価してもらえました。価値観を共有する群れとして社会的なインパクトを実現していく、というゼブラ企業らしいコミュニティの形が現れてきているように感じます。

社会的共通資本を増やすアプローチが、インパクト創出の鍵

——“群れ”につながるものとして、投資だけではなく「ステークホルダーとの協業」の事例もできた1年でしたね。

田淵さん:長野県塩尻市と、現地でインキュベーション事業を運営する「スナバ」とともに、地域の起業家と地域内外の投資家をつなぐアクセラレータープログラムをつくりました。設計の初期段階から入り、地域外の投資家も巻き込めたことが良いポイントです。

今回の事例は、他の地域の方々からも注目いただいています。特に地方行政の現場を任されている方々のなかで、政府がすすめるユニコーン企業創出の政策と、地方が本当に求めている政策の間にギャップを感じている方が、ゼブラのコンセプトに共感してくれているんです。

——協業をする際に意識されてきたことはありますか?

陶山さん:取り組みを通じて経験したことや学んだことを独占することなく、型化・理論化して社会的共通資本にすることです。塩尻市のプログラムにおいても、セミナーなどの記録をとって積極的に発信しています。一緒に取り組みをしたスナバも、行政のなかでは珍しいくらいにオープンなスタンスを持っていて、塩尻以外のプレイヤーや他の自治体の支援もされています。そうしたマインドセットを持った方々と手を組むことが、協業のポイントだと思いました。

陶山さん

——意地悪な質問ですが、企業としての競合優位性を保つことを考えると、知見やノウハウは公開しないほうがいいのではないでしょうか……。

陶山さん:その考え方は企業経営の王道だと思います。自社が競争に勝ち拡大することで、社会的インパクトを実現する「スケールアップ」のアプローチ。しかし、社会的インパクトを目的とするゼブラ企業にとっては、知見やノウハウを共有し、真似する企業を増やすことでインパクトを大きくする「スケールアウト」のアプローチのほうがなじむことも多いと考えています。

阿座上さん:Z&Cの目的はゼブラ経営を浸透させることなので、情報を独占せず、なるべくコモンズにしていきたいと考えています。発信を増やすことができれば、ゼブラ経営の第一人者として信用してもらえますし、情報が入ってきやすくなる。新しいつながりも増えていくでしょう。一周回って、Z&Cの成長にとってもプラスになります。

実際、2022年3月に陽と人への出資の過程をフォーマット化した「LIFE type1」というタイムシートを公開した際は、多くの方から反響をいただきました。現在までに300名以上が資料をダウンロードしてくださり、関わりたいという声もいただいています。また、海外の投資家や起業家も興味を持ってくれている。このように、国内外において、Z&Cの取り組みのプレゼンスを高めることができれば、ゼブラ経営の社会実装に近づくと考えています。

LIFE type1の詳細はこちら

世界に認知された “日本ゼブラ” のユニークさ

——「海外におけるプレゼンスの高まり」でいえば、田淵さんがZebras Unite(*1)の理事に就任したのも大きな出来事でしたね。就任したことによる変化はありますか?

田淵さん:世界と日本の距離感が縮まっていることを感じています。毎月のボードミーティングに出席しているので、Zebras Uniteの戦略をより理解できたとともに、日本の活動の実績やユニークさをより知ってもらうことができました。

田淵さん:世界から見て日本のユニークなポイントは、政策にゼブラ企業の考え方が組み込まれ始めていることです。昨年、経済産業省から発行された『小規模企業白書』の2022年版で、『社会課題解決と経済成長の両立を目指すゼブラ企業への注目』というタイトルにて、Z&Cが事例として掲載されました。

政府主導ではなく草の根活動的に始まったゼブラムーブメントは、そもそも政治と距離があります。日本のこの動きは世界的にも珍しく、Zebras Uniteのボードメンバーも驚くほどでした。そうした実績を評価され、日本は来年のボードミーティングの開催候補地のひとつになっています。

また、Z&Cのパートナーでもある、女性起業家によるビジネスコンペティション「カルティエ・ウーマンズ・イニシアチブ」を主催するカルティエとも、新たなコラボレーションの可能性を模索中です。カルティエは、2025年の大阪万博にて女性パビリオンを担当しています。

*1・・・「Zebra」の概念を生み出した、アメリカ西海岸発の団体。Zebras and Companyの創業者3名は、その東京チャプター「Tokyo Zebras Unite(TZU)」としても活動している。

ダイバーシティが増し、より多様な人とつながれる会社に

——日本が世界のゼブラムーブメントの活動を牽引しているのは誇らしいことですね。事業面での変化はよく理解できました。続いて、Z&Cの組織としての変化を教えてください。

阿座上さん:一番大きな変化は、新卒&第一号社員として阪本 菜(以下、サイ)さんが入社したことです。創業者3人だけのときは暗黙知で進めていたことも、サイさんに共有することを考えれば、わかりやすく言語化する必要があります。3人のなかで言葉の定義や考え方の違いをすり合わせる、いいきっかけになりました。

サイさん:会計やマーケティングなど基礎的な部分について、ゼブラの文脈を入れつつ教えてもらえる研修を受けました。社会的共通資本の話にもつながりますが、その様子を録画して公開研修として発信したんです。同世代の方や、少し上の世代の教育担当者の方がよく見てくれています。

サイさん

田淵さん:他にもサイさんが入ってくれた大きな変化として、発信の仕方のバリエーションが広がったこともあげられます。ふたまわりも世代の違うサイさんやインターン生のおかげで、性別と世代のダイバーシティが増したんです。

サイさん:インターンの方と一緒にはじめたTwitter Space「ちびゼブラの学び」では、Z&Cの取り組みやゼブラ企業とはなにかということを、同世代にも楽しく知ってもらえるように発信しています。ゼブラ歴が1年の私は、はじめてゼブラ企業の考えに触れる人と近い感覚が持てると思うんです。自分たちが学んだことを噛み砕いて伝えることで、この概念をより多様な人に知ってもらいたいと思っています。

※サイさんの入社エントリーはこちら

——経営や投資などの堅固なテーマをうまく翻訳してくれているんですね。組織としての変化は、他にもありますか?

阿座上さん:創業者3人の「関係性の質」は昨年よりも高まってきたように思います。お互いをプロフェッショナルとして信頼しているからこそ、これまではスピードを重視して、細かなすり合わせは最小限にしていました。ただ、この1年で具体的なプロジェクトが多くなってきたため、仕事の優先順位や言葉の遣い方の違いに目が向くようになったんです。

スピードを落とさないことを意識しつつ、お互いの感覚や違いを共有し合う対話を重ねたことで、組織の「レジリエンス」がでてきたように感じています。3年目は、お互いの強みをより生かしつつ、新たな役割分担も考えていきたいです。

次のテーマは「ゼブラ経営における“ガバナンス”」

——では最後に、3期目の展望を教えてください。

田淵さん:具体的なことは検討中なのですが……。先ほど話にでてきた300社のコンセプトに共感を示してくださる方々にフォーカスした取り組みをできたらと思っています。

陶山さん:Z&Cがカタリスト(触媒)の役割を担うイメージです。それぞれのプレイヤーが日々の取り組みから得ている叡智を、より理解しやすく結晶化することで、多くのコラボレーションが生まれたり、追従するプレイヤーが増えたりするといいと思っています。

阿座上さん:今までは海外の事例を中心に発信してきましたが、今後は日本のゼブラ企業についても発信していきたいです。Z&Cとの直接的な関わりのない取り組みだとしても、ゼブラ経営の観点から紐解き、結晶化して、社会共通資本を豊かにしていきたいです。

——カタリストとして、国内ゼブラ企業の叡智も結晶化させていく。

阿座上さん:また、テーマとして深掘りしたいと考えているのは「ゼブラ経営におけるガバナンス」です。

陶山さん:コンプライアンスと同じようなニュアンスで捉えられがちな「ガバナンス」という言葉ですが、ここではもっと多様な意味で使っています。経営体制のあり方や意思決定・合意形成のプロセスなど、よりよい経営を実現するためのあらゆる要素を指しているんです。

目指す社会変革を絵や言葉に落とす「セオリーオブチェンジ」、それに基づいてファイナンスプランを考える「Finance for purpose」の発展形として、経営体制や意思決定のあり方を最適化する「ガバナンス」に関する理論化を進めていきたいと思います。

阿座上さん:3期目は、ゼブラ経営の理論化をより進めつつ、その理論をもとにした協業や、国内外のゼブラ企業と出会う機会などを通して、インパクトを創出していきたいと思います。投資ももちろんですが、僕らの発信する情報やコミュニティとしての動きにも、期待していただけたら嬉しいです。

PROFILE

Fumiaki Sato

編集者・ライター・ファシリテーター。「人と組織の変容」を専門領域として、インタビューの企画・執筆・編集、オウンドメディアの立ち上げ、社内報の作成、ワークショップの開催を行う。趣味はキャンプとサウナとお笑い。