2023.12.15 ZEBRAS

Web3.0、DAO、協同組合、地域創生。世界的ゼブラカンファレンスDazzleCon’23でみたゼブラムーブメントの最前線


Web3.0、DAO、協同組合、地域創生。世界的ゼブラカンファレンスDazzleCon’23でみたゼブラムーブメントの最前線のイメージ

みなさん、こんにちは。元々はアメリカの4人の起業家に始まったゼブラムーブメント。2023/10/21-23にかけて、アメリカのワシントンDCで米国Zebras Uniteの主催するゼブラ企業に関してのカンファレンス「DazzleCon’23」が開催されました。今回のDazzleConは、2017年に開催された第一回に続き、二度目の開催となります。

200名ほどの参加があった今回のカンファレンスは、アジアからの参加者は少なかったものの、アメリカ人の他に、フランス、オランダ、ジブラルタル、スペインなどのヨーロッパや、オーストラリアなどからも起業家や投資家がみられるインターナショナルなカンファレンスとなりました。

日本からは、米国のZebras Uniteの理事・Tokyo Zebras Uniteの代表も務めている、Zebras and Companyの田淵さんが参加。「ゼブラ経済における公共政策の役割」についてのセッションにスピーカーとして登壇もし、2日間にわたり、世界のさまざまなゼブラ起業家/経営者やステークホルダーと議論や交流をしてきました。

今回の記事では、田淵さんが滞在中に見聞きした最新の世界のゼブラの事例、そして、世界における日本のゼブラムーブメントの立ち位置について、阪本 菜がご紹介していきます。

「Zebras Unite」とは
「Zebras Unite」とは、ゼブラ企業という概念を提唱したアメリカ西海岸で女性起業家4人を中心に発足され、次世代のため、ゼブラという概念の社会実装を行っている法人です。アメリカ・イギリス・日本をはじめとした国の30以上の都市にチャプターをひろげ、起業家、投資家、支援者を含めた20,000人以上のコミュニティを持ち、現在は学術機関や投資機関との提携、コミュニティ活動を通して、新しい経済の形を探る活動をしてます。「Tokyo Zebras Unite」は、Zebras Uniteの東京チャプターとして2019年にスタートしました。

Dazzle Conでも注目、海外のゼブラ事例

——今回は、去年の秋にZebras UniteのBoard Memberの合宿があって以降の世界中のZebras Uniteのメンバーと共有する良い機会だったと思いますが、田淵さんがDazzleConで見聞きした海外のゼブラ企業にまつわる事例の中で、面白いと思ったり、他のゼブラ企業にとって有益だと思ったアイディアの事例があれば教えて下さい。

そうですね、今回のDazzleConでは、短期集中的に色々なセッションに参加しましたが、その中でも特に面白かった海外のゼブラ事例を3点、紹介します。

黎明期からインパクト投資に関わるVillage Capital

一つ目は、アメリカの有名なインパクト投資家であり、Zebras Uniteの理事も兼任している、Village CapitalのCEOのAllie Burnsからきいた、同社の例です。Village Capitalは、起業が世界の最大の問題を解決するための重要な手段にもかかわらず、資本がテック分野や白人男性に偏ってしまっている現状に立ち向かうための活動をしているゼブラ企業であり、インパクト投資の古参プレイヤーです。

他にも有名な古参プレイヤーなのは LGT Venture PhilanthropyやOmidyar Networkがいますね。

インパクト投資の黎明期である2009年から、インパクト投資をよりインクルーシブにし、より多様な起業家に資本を流すために金融業界全体に変化を与えるような活動を行っています。より公正な投資側に恣意性のない、起業に関する新しいツール・技術・プロセスを設計し、テストしながら共有してくれています。

実はZebras and Companyとして第一号出資先の陽と人に出資する際に作成した投資理念とスキームを基にしたタームシートの雛形である「LIFE type1」を制作する際にも、Village Capitalの例を参考にしています。

今回、Allieからは、VIlledge Capitalが、システムレベルチェンジ(業界を変えてしまうような変化)を起こすために、ファンド運営、アドバイザリー、Saasプロダクト(Abaca)の3つのどれを今後主軸にしていくかについて、現在検討段階という話を聞きました。

インパクト投資の古参プレーヤーであるVilledge Capitalのような、業界の人だったら誰でも知って知っているプレーヤーでさえも、Zebras and Companyや他のシステムチェンジャーと同じように、今後の進むべき方向性について悩みを抱えてトライアンドエラーで進んでいるということはとても興味深かったですね。引き続き彼女たちの動向をチェックしていこうと思っています。

ゼブラムーブメントと相性が良いWeb3.0の概念

今回のカンファレンスで新しい潮流だと感じたのはP2P方式の分散型ネットワークの活用です。特に注目したのは、アメリカのHolochainという会社です。Holochainは、仕組みは違いますが、みなさんも聞いたことがあるBlockchainと同じく、データを非中央的に管理する手法です。

Blockchainでは、管理に全ユーザーが同意しなければデータが信頼されない共有の台帳が使われているのに対し、Holochainは、各ユーザーが共通の台帳の代わりに自分自身のデータのコピーが使用されています。合意は関係する当事者同士で直接形成されるため、全体での合意形成が不要です。そのため、検証が迅速に行われ、よりスケールしやすくなるんです。現在、Holochainは、分散型データの信頼性を確保する新たな選択肢の一つとなっています。

Holochain以外にも、DAOに代表されるような非中央集権的な考え方をテクノロジーを通じて解決しようと考えている会社はよく見かけるようになりました。非中央集権的なガバナンスを体現しようと考えているZebras Uniteとは相性がよいため、今回のカンファレンスにも多くの起業家が参加していました。

DazzleConをきっかけに知った他の企業では、分散型ネットワークプロトコル「Nostr」という企業は、Twitterの創業者であるジャック・ドーシー氏から数千万円規模の出資を受けており、非中央集権的・自立分散的な考え方をベースとするテクノロジー市場は今後大きくなっていく可能性はあると感じています。

アメリカで特に注目される、自律分散的な組織のあり方である協同組合

また、元クレディユニオンのMikeがカンファレンスの中で行っていた協同組合に関してのワークショップも印象的でした。

協同組合とは、「共通する目的のために集まった個人もしくは企業者が、組合員として民主的な管理運営を行っていく相互扶助組織」のことです。以前Zebras Uniteが行ったリサーチでは、ゼブラ的な組織によって最も相性の良い組織体制は協同組合(Coop)だという結果が得られており、それを受けてZebras Uniteの組織体制を2020年に協同組合に変更しています。日本でもコープさっぽろのような先進的な協同組合のケースが聞かれるようになりました。今後、日本の協同組合の事例も深掘りしていきたいですね。

日本だけでなく、海外プレーヤーも同じように注目しているPlace-basaedの考え方

——まだまだ役割を模索するインパクト投資、ゼブラの考え方とテクノロジーの融合、ゼブラ的組織形態、それぞれ今後リサーチしていきたい面白いトピックですね。今回のカンファレンスで、個別のセッションだけではなく全体として感じたトレンドはありましたか?

今回のカンファレンスに限らず、ここ1-2年で、世界で同時多発的に広まっているトレンドに、Place-basedの考え方があります。「点ではなく面」としてのソーシャルインパクトを生み出そうとする考え方です。

Place-based impact investingとは、個社ではなく物理的に区切られた地域に対し、「この地域をよくする」という共通目的のもと行なうインパクト投資のことです。こちらの記事で紹介しているZebras and Companyの出資先であるNEWLOCALが実践されていることが、まさに日本における事例ですね。

実は、Zebras and CompanyがNEWLOCALとの投資を発表したのとほぼ同時のタイミングで、Zebras Uniteの創設者であるMaraから私にPlace-basedの流れが面白いとの連絡があったんです。Maraはアメリカ、バーモント州、ハイエーカーズファームでのPlace-basedの活動、コミュニティ回帰の考え方に注目しています。

また、地域性と金融という観点で言えば、実はアメリカの人口の多くは地域に散らばっているため各地にCDFI(日本における地銀のような存在)が存在してるという点にも注目していました。Zebras Uniteとしても、CDFIが持っているコミュニティファイナンスとうまく連携しよう考えているので、Zebras and Companyが塩尻市などと取り組んでいる地域の自治体、地銀との取り組みもアメリカや世界を先駆ける事例になりうるかもしれませんね。

CDFIとは
地域振興金融機関(CDFI)とは、通常の金融機関がアクセスしにくい農村、都市、先住民、および他のコミュニティに対して、公平かつ責任ある融資を提供する使命を担っているお金の貸し手

伝統的な銀行と異なり、資源の不足したコミュニティ内の個人、組織、そして事業に特化した融資を行い、クライアントに金融教育やビジネス指導、経済的潜在力を高め、富の構築をサポートするための低金利ローンを提供しています。

CDFIの融資は、小規模事業の成長や住宅所有権の促進、生計を立てるための賃金の仕事の創出、学校、食料品店、医療センターの発展のサポート、気候変動対策の資金提供など、さまざまなプロジェクトに活用されています。

海外から注目された日本でのゼブラの取り組み

——これまで、世界のゼブラの動きについて伺ってきましたが、今度は世界からみた日本の動きについて伺えたらと思います。日本では、今年の6月に国の経済政策に「ゼブラ企業」と明記され、その内容が本国のZebras Uniteの発信するMediumにもシェアされたりと、ワールドワイドに日本の活動が注目される機会がありました。そのような中で現地に行ってみて、海外からの日本でのゼブラの取り組みに対しての反応はいかがでしたか?

そうですね、以前に比べて日本でのゼブラの取り組みがより注目されている感触はありました。Zebras Uniteの共同創業者のMara ZepedaやAstrid Scholzにも、6年前に始めたゼブラムーブメントが国を超えて、日本という世界第3の経済大国の政策に入ったことにとても驚かれました。

彼女たちからは、Zebras movementの変遷を語る際の新たな1ページをZebras and Companyが刻んだとまで言ってもらいました。今後、日本でよりムーブメントを広めていくためにZebras Uniteとはより協働を深めていきたいですね。

——以前、ゼブラムーブメントにおいて、日本的な考え方との親和性を感じると話されていましたが、具体的にはどのような点でしょうか?

ステークホルダーを大事にする点でしょうか。Zebras Uniteの特徴として、財務インパクトや直接的な受益者に対するインパクトだけでなく、ステークホルダー(直接的に事業で与える人たち以外)に対してのインパクトに対してなど、事業を通じて、社会をよくしていくために、多種多様なステークホルダーの存在、そしてその人たちに与えるインパクトを重要視していることがあります。

ESGにおいてのステークホルダーマネージメントがいかに企業の価値を下げないかの守りの視点なのに対し、ゼブラのステークホルダーマネージメントは、いかに従業員の人生が豊かになるか、どうエンパワーできるかという攻めの視点で着目されているんです。

もともと、日本に伝わる三方良しや老舗企業のような考え方は、まさにステークホルダー主義そのものです。昔から日本に根付いていた概念が、海外から輸入された新しいワードとともに、再度話されている状況なので、日本では、ムーブメントが起こりやすいと言えます。

最後に

——ありがとうございます。世界からも期待されていて嬉しいですね。では、最後に総括としての感想をお願いします。

DazzleConを通じて、一番印象的だったことの一つが、格差に対する周囲の意識が高いことでした。ビジネスでインパクトを生むかのような話も当然あるのですが、人種、情報格差、経済格差などに対する問題意識が強く、それもあって、ガバナンスなどの資本構造や会社構造、分配や権利構造みたいな話が日本にいるより多くされていたんです。もちろん、DazzleConに集まっている人の問題意識の強さという面もあるかもしれませんが。

欧米、特にアメリカにおいては、さまざまなところに見える形で格差・差別が存在しているのがあり、いかに公平に事業を行えるかという文脈でゼブラムーブメントが語られることが多いです。ブロックチェーンやホロチェーンなどの分散型ネットワークや、協同組合の考え方が欧米中心に盛り上がっているのも、やはり、中央集権的で、すでに資本を持っている人たちがより資本・情報を蓄積していき格差・差別が拡大している現実に対してのアンチテーゼとも言えます。
一方、アメリカほどは格差・差別が目に見えにくく、言語や外見での違いの少ない単一性の高い文化圏である日本においては、そういった個人間格差よりも「都市と地域の差」という文脈からゼブラが語られることが多いのではないでしょうか。

アメリカと日本を違いについて触れましたが、国・地域によって、その国のゼブラ企業がフォーカスしたり親和性のある分野は様々です。

今後も、思想を同じくしつつも多種多様に広がるゼブラムーブメントの中で、日本らしいゼブラのあり方を模索していきたいと思っています。日本での活動が、他の国のゼブラ企業のムーブメント繁栄のヒントになったら嬉しいですし、私たちとしても、海外のユニークなゼブラ企業の例を独自に紹介していきたいですね。

PROFILE

ゼブラ編集部

「ゼブラ経営の体系化」を目指し、国内外、様々なセクターに関する情報を、一緒に考えやすい形に編集し、発信します。