2021.11.02 NEWS

50年間のVC業界の常識を変えるセコイアキャピタルの新たな試み – エバーグリーンファンド


50年間のVC業界の常識を変えるセコイアキャピタルの新たな試み – エバーグリーンファンドのイメージ

2021年10月26日、シリコンバレーの老舗ベンチャー・キャピタル(VC)であるSequoia Capital(セコイアキャピタル)が新たな投資ファンドのビジネスモデルについて発表しました。セコイアキャピタルは、Apple、Google、Zoomといった企業に各々の企業の初期段階から投資をしてきた著名なVCです。そのセコイアキャピタルが、50年間世界のスタンダードとなっていたVCのビジネスモデルをエバーグリーンファンドと呼ばれる手法を使って変えようとしています。

数年前からエバーグリーンファンド*1 や最近、VC業界からも長期的投資といったキーワードをちらほら聞くようになり気になっていたのですが、今回のセコイアキャピタルが発表した新しいファンドストラクチャーは、VC業界も今後こういった流れが増えてくることを示唆しているのではないかと思います。本記事では、速報としてセコイアキャピタルが発表した新しいファンドについてお伝えします。

10年間という期限-従来のVCモデルの課題

ベンチャーキャピタルファンド(VCファンド)と呼ばれるビジネスは、1970年台に始められました。通常VCはLP投資家と呼ばれる投資家からVCファンドへの資金を集め、10年間というファンド運用期間の中でその資金を使ってスタートアップへ投資します。この「10年間」が何を意味するかというと、10年後にそのVCファンド事業を終了してLP投資家にリターンを乗せて資金を返すということになります。つまり、VCファンドとしては、その間に「exit」と呼ばれる投資先の株式を売却して利益を作るということをしなくてはいけません。スタートアップ側から見ると、投資されるタイミングによりますが、一般的に3-5年で上場を期待される理由はこういった構造上の理由があります。

セコイアキャピタルの発表の背景と新しいファンドモデル

セコイアキャピタルのオフィシャルアカウントが投稿したMedium*2の記事によると、「我々の業界は、いまだに1970年台に作られた10年のファンドサイクルにとらわれています。ICチップはどんどん小さくなり、ソフトウェアはクラウドで運用されているのに、VCはフロッピーディスクで仕事をしているようなものです。昔は、10年のファンド運用期間というものがスタートアップの世界にあっていたが、もうその前提自体が変わってしまいました。短すぎる期間は投資家と投資先との意味のある関係性を壊してしまい、ミスアラインメントを引き起こします。優秀な起業家は社会へ継続的なインパクトを与えたいと望み、彼らのアンビションは10年間という期間に制限されません。それは我々にとっても同じことです」と述べています。

新たなセコイアキャピタルのモデルとはどういったモデルなのでしょうか?Mediumや他メディアの記事などからの筆者の理解では、セコイアキャピタルは、「Sequoia Fund」という運用期限のないエバーグリーンファンドと、そこから資金提供する未上場株向けのサブファンドを設立します。サブファンドは、成長してきた投資先企業からexitするのではなく、Sequoia Fundに売却などを通じて引き継ぐことができるので(図④)、実質的にセコイアキャピタルは長期投資家となることができます(図⑥)。その後、投資先企業が上場して、然るべきタイミングで市場へ売却した場合、Sequoia Fundは売却益を得ることができます(図 ⑦⑧)。

また、サブファンドでの利益はサブファンドの期限と共にSequoia Fundに償還されます。これをセコイアキャピタルは、「Continuous feedback loop」と表現しています(図⑨)。Sequoia Fundはこの資金を原資に新たなサブファンドを通じて継続的に投資活動を行うことができるようになると考えられます(図⑩)。

Sequoia CapitalのLP投資家は、(他のエバーグリーンファンドでも採用される手法ですが)これまでのLP投資家のように投資期間を固定されることなく、2年間のロックアップ期間以降は年に二回、自らの持ち分を売却することが可能となり、流動性を持って投資リターンを得ることができるようになります。

このように、運用期間の定めのないファンドを設立することによって、セコイアキャピタルはファンドの運用期間の終了を理由にExitするのではなく、投資先のスタートアップの成長期間に合わせてExitすることができるのです。

Zebras and Company(Z&C)の取り組み

実は、Z&C設立の際も、海外のエバーグリーンファンドの仕組みを研究・参考にしました。そこから得た知識を生かし、Z&Cからの投資もいわゆる運用期間に左右されない仕組みを採用しており、長期的な投資を可能としています。この背景にあるのは、Z&Cの「Different Scale, Different Future」というコンセプトがあり、これは、これまである種当たり前とされてきた成長やスケールアップのあり方に縛られるのではなく、違った物差しやスケールのあり方を認めることによって違った未来を作れるのではないかとの思いを込めています。

ファイナンスモデルの変化

今回のセコイアキャピタルの取り組みは、上場後も成長を続ける企業の株を持ち続けて投資リターンを最大化することが目的とも言われています。一方で、期限のない投資が起業家にとって不要なexitへのプレッシャーをやわらげることも事実です。先日も、Zebras Management Journeyでは、アメリカのLTSE(Long Term Stock Exchange)についての速報(LTSE記事へのリンク)をお伝えさせていただきましたが、世の中で従来のファイナンスモデルや時間軸に対する考え方が変わってきているのを感じます。今後もこういった変化をいち早くお伝えしていきたいと思います。

*1 投資ファンドの運用期間を定めず投資収益を再投資に回すファンド
*2 日本のnoteのようなブログサイト

参照記事:
Medium 「The Sequoia Fund: Patient Capital for Building Enduring Companies」
Financial Times「Sequoia to restructure itself away from traditional VC mode」
Pitchbook「Why Sequoia is blowing up a 50-year-old financing model」
Tech Crunch「Sequoia dramatically revamps its fund structure as it looks to rethink venture capital model 」

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ゼブラ編集部

「ゼブラ経営の体系化」を目指し、国内外、様々なセクターに関する情報を、一緒に考えやすい形に編集し、発信します。