2024.03.12 ZEBRAS

【創業3周年】バウンダリーを超えていく。取り組みも組織も新しいフェーズに突入したZ&Cの描く4期目


【創業3周年】バウンダリーを超えていく。取り組みも組織も新しいフェーズに突入したZ&Cの描く4期目のイメージ

2024年3月12日、Zebras and Company(以下、Z&C)は3周年を迎えました。

この1年、Z&Cはゼブラ企業への投資や経営支援、各種企業・機関との協業のみならず、メディアや行政とも連携し幅広いアプローチを実践してきました。政府の発表する「骨太の方針」に「ゼブラ企業の推進」が明記されるなど、“ゼブラ企業の社会実装”を着実に推進しています。

一方、社内においては、共同創業者兼代表取締役の陶山祐司さんが退任し、第1号投資先の「株式会社陽と人」代表の小林味愛さんが社外取締役に就任。2人目の社員採用として田中苑子さんも入社するなど、大きな体制変更も経験しました。

・関連記事:代表取締役の退任と新社外取締役の参画。新体制になったZebras and Companyがつなぐ想いのバトン

創業以来の「変化の年」とも言えるこの1年を、Z&Cのメンバーはどのように振り返るのでしょうか。3期目を総括し、4期目に向けた意気込みを伺います。

個の活動がつながり「ゼブラ企業が育まれるエコシステム」の輪郭が見えてきた

——Z&Cにとって3期目はどのような1年でしたか?

田淵 良敬(以下、田淵さん):Z&Cの存在価値や在り方を再認識した1年でした。2年目から注力していたゼブラ企業への投資や経営支援などの「個の活動」が、それぞれ花開き、つながり、新しいフェーズの取り組みに発展していくのを感じています。

たとえば、最近は大手企業との接点もかなり増えてきました。その中には自らがゼブラ的な経営を目指すだけでなく、ゼブラ企業との協業や投資を検討されている企業もあります。創業当初は比較的小規模なゼブラ企業がメインの支援先でしたが、より多様な企業がゼブラムーブメントに加わり、投資などのビジネスを通じてつながりができ始めているのは大きな変化です。

また、つい先日(2024年3月1日)、中小企業庁と協議してきた「ローカル・ゼブラ推進政策」を発表することができました。これまで実践してきた個々の活動で得た知見をもとに、地域に根ざす「ローカル・ゼブラ企業」を創出するエコシステム作りの実証事業が始まりました。

田淵 良敬さん

阿座上陽平(以下、阿座上)さん:ゼブラ企業が政府の「骨太の方針」に明記されたり、『WIRED』日本版の「リジェネラティブ・カンパニー」特集に掲載されたりしたことも、大きな出来事でした。そうした後押しもあって、先日(2024年2月26日)の衆議院 予算委員会では、岸田首相の答弁のなかに「ゼブラ企業」という言葉が登場しました。これまで準備してきたものが形になり始めたことを実感しています。

田淵さん:このように、政治の領域にゼブラ企業という概念が入り始めている国は、世界中探しても日本だけです。それもあって日本のゼブラの動向は海外から注目されています。

2023年10月にアメリカで開催された、Zebras Unite(Zebrasの概念を提唱した法人)主催のカンファレンスでは、「日本におけるゼブラムーブメントの広げ方」を紹介して欲しいとのことで、パネルディスカッションへの登壇を頼まれました。世界中のZebras Uniteのメンバーから個別相談を申し込まれるなど、日本のプレゼンスの高まりも感じています。

これらの変化を通じて、やはりZ&Cは、投資家や経営コンサルタントなどの既存のカテゴリだけには当てはまらない存在なのだと再認識しました。個社への投資や支援にとどまらず、地域や行政も含む「ゼブラ企業が育まれるエコシステム」を作ることがZ&Cの役割であり、この1年で徐々にその輪郭が見えてきたんです。

——比較的新しいメンバーである阪本さん、田中さん、小林さんは、この1年で印象的だった出来事や学びはありますか?

阪本菜(以下、菜さん):印象に残っているのは、2023年8月に出版した書籍『ZEBRA CULTURE GUIDEBOOK Vol.01』の販売イベントで、さまざまな地域をまわったことです。2022年7月に入社してからそれまで、「ゼブラ企業にどんな人が関わっているのか」という肌感覚が掴めない部分もありました。ゼブラ企業の経営者や周りの人たちに直接触れられたことは大きかったです。

田中苑子(以下、苑子さん):私も2023年10月にZ&Cに入社してから、「社会性と経済性の両立」を本当に実現しようとしているたくさんのゼブラ企業の存在に触れました。転職前に理想としていた世界が、本当にあるんだと嬉しく思ったのを覚えています。全国各地で実際に動いているプレイヤーの方々にたくさん出会って、みなさんの活動や想いをちゃんとつなげていきたいと思いました。また、自分自身もプレイヤーの一人としてどんどんアクション量を増やしていきたいなと思います。

田中苑子さん

・関連記事:先人が築いた資本主義社会の上で、私たちなりの消費や社会の在り方を模索したい——Z&Cの新メンバー、苑子さんの想い

小林味愛(以下、小林さん):私がZ&Cの社外取締役になったのは、2023年10月です。それ以前も、投資元と投資先という関係性で関わってきましたが、この半年で改めて「ゼブラ企業」への解像度が高まりました。

ゼブラ企業の特徴である「群れ」とは、ただ遊ぶ、慰め合うという意味ではなく、多様な価値観を受け入れながら、お互いのリソースや強みを活かし合う在り方のことです。それを全員が大事にしているからこそ、違う地域や異なる事業領域のゼブラ企業同士が協業したり、一緒に社会をより良くする仲間になれることを実感しました。

次の1年はその仲間の輪を、近しいところにいる経営者だけではなく、大きい企業や機関、行政にまで広げることで、ゼブラ企業が育まれるエコシステムを作っていきたいと思います。

・関連記事:出資第1号「陽と人」、その後の2年とゼブラ経営について思うこと

代表取締役の退任を機に、チームワーク強化に挑戦した1年

——組織面では、代表取締役の陶山さんの退任は大きかったのではないでしょうか?

阿座上さん:個人的にはこの1年の一番大きな出来事でした。結果としては、陶山さんとZ&Cにとって最善の判断ができたと思います。

僕らがゼブラムーブメントで広げていきたいのは、世の中の「もっと、こうしたほうがいいよね」ということに、楽しく取り組むための「新しい仕組みづくり」です。その範囲は、経営と金融、さらには生き方にも及びます。今回の体制変更は、まさにその仕組みづくりの実践の一つ。Z&Cの経営と陶山さんの生き方にとって一番いい関わり方を模索した結果です。

ただ、もちろん陶山さんの存在は小さくはありません。彼が抜けたとしても、みんなが楽しく働き続けるためには、個人とチームが力をつける必要がありました。退任の議論を始めたころから、そのための仕組みづくりを進めてきたんです。

阿座上陽平さん

菜さん:陶山さんの退任と苑子さんの入社によって、社内の体制は大きく変わりました。それ以前は、陶山さん、阿座上さん、田淵さんがそれぞれプロジェクトを進め、ときよりコラボレーションする体制。

しかし、いまは阿座上さん、田淵さんがメインで担当するプロジェクトに対して、私か苑子さんがサポートとして入ることができます。苑子さんの振る舞いを見て、阿座上さんや田淵さんとの連携の取り方を学ぶこともできる。個人としての力もZ&Cのチームワークも、日に日に強まっていると感じます。

阿座上さん:菜さんがそう感じてくれているのは嬉しい(笑)。

Z&Cにおける「チーム」とは、社内のことだけを指すわけではありません。出資先や協業先はもちろん、同じ企業に出資した株主同士、業務委託やインターンとして関わってくれているメンバーも、全員が仲間でありチームです。これからも大切な仲間たちと一緒に、個人としてもチームとしても強くなっていきたいと思います。

Z&Cらしく、世の中を見る「新しいものさし」を届けていきたい

——4期目への期待や楽しみなことはありますか?

苑子さん:ゼブラ企業の実践者、それを目指す仲間たち、支援側のプレイヤーなどを集めて今年6月に開催するカンファレンス「ZEBRAHOOD2024」がとても楽しみです。参加者の化学反応によって、新しい活動が生まれる場にしたいと思います。

小林さん:被った(笑)。ZEBRAHOOD2024、私も本当に楽しみです。このカンファレンスには、ゼブラ企業はもちろん、ゼブラマインドを持った大企業や投資家、行政の方などさまざまな人が集まります。これまで「ゼブラ企業いいよね」と価値観ベースでつながっていたところから、出資や協業といった具体的なアクションでつながる関係が生まれたら嬉しいです。

阿座上さん:今回のZEBRAHOOD2024は、Z&Cらしい新しいフォーマットで作りたいと思っています。たとえば開催場所は、下北沢駅前の街中です。人が自由に行き来できるような空間を作ります。

・ZEBRAHOOD2024のプレスリリースはこちら
・チケット購入はこちら

いわゆるカンファレンスは、ビルで開催されたり、逆に森などの自然の中で開催されることが多いと多います。でも、自分たちの未来のことや、目の前にある大切なものをビジネスでどう継いでいくかを考えるなら、暮らしと接続された場所で開催したほうがいいと考えました。

子どもや学生、おじいちゃん、おばあちゃんも歩いているような環境で、「10年後、目の前の景色がどうなっていたらいいか」を仲間と一緒に語り合う。これまでにない体験ができるカンファレンスにしたいと思います。

——新しいフォーマットで開催するカンファレンス、楽しみですね。他にも楽しみな取り組みはありますか?

菜さん:カンファレンスと同時に出すインパクトレポートも楽しみです。3年間のZ&Cの活動を整理して、一冊にまとめようとしています。作る過程でゼブラ企業とは何かを見つめ直せることや、できたものを通じて、ゼブラ企業のことがより伝わったら嬉しいです。

阪本菜さん

阿座上さん:インパクトレポートも新しいフォーマット、新しい見せ方で作りたいと考えています。いま考えているポイントは3つあって、1つは「定性的な変化を表現する」ということです。

いわゆるインパクトレポートは、定量の変化について記載されているものが多くあります。しかし、ゼブラ企業の取り組みは必ずしも数値だけでは評価できません。だからこそ、データの背景にあるストーリーやナラティブを僕らなりに表現したいと思います。

2つ目は「インサイトを届ける」こと。数値的な結果だけではなく、どのような仮説を立て、どのように取り組み、結果がどうだったのか。そのプロセスから導き出されるインサイトを共有したいと思います。

3つ目は、「未来を語る」こと。冒頭に「個の活動がエコシステムへ」という話があった通り、最近はZ&Cが個別に行ってきた活動が統合され、新しい意味が見出されるようになりました。これまで紡がれてきたナラティブやインサイトを統合して、もう少し先の未来まで探求したいと思います。

田淵さん:ここでいう「未来」とは予測するような未来ではなく、「Z&Cやゼブラのフレームから見た、世の中の姿や可能性」を意味します。Z&Cのコンセプトは「Different scale, Different future(これまでとは違うものさしがあれば、これまでとは違う成長と未来がある)」ですが、インパクトレポートでは、まさに「これまでとは違う“ものさし”」を届けたいです。

4期に向けた個々人の挑戦

——では、最後に一人ずつ4期に挑戦したいことを教えてください。

菜さん:6月まではZEBRAHOOD2024とインパクトレポートに関する仕事が大きなウェイトを占めるので、まずはそちらに注力したいと思います。昨年、書籍関連のプロジェクトを通じて学んだことを活かして、しっかり進めていきたいです。

そのうえで、生活と仕事のバランスはこれまで以上に意識したいと思います。Z&Cのビジョン「優しく健やかで楽しい社会を作る」を実現するためには、私自身がそうあることが大切です。きちんと仕事をしつつも、食事と睡眠はしっかりとって、健やかな日常を送っていきたいと思います。

苑子さん:私は「社会性と経済性の両立」という思想を社会に実装する力を高めるため、「(手段としての)稼ぐ力」をちゃんと身につけていきたいと思います。また、支援側だけではなく、ゼブラマインドの実践者としても行動していきたいと思います。私が追求したいテーマは「人と自然の共生」。人と自然の関係性を探求する取り組みにはどんどん足を運び、人の在り方や意識に変容を起こすアプローチを模索していきたいです。

田淵さん:Z&Cの設立から最初の3年間を、「さまざまなことに挑戦する期間」という意味も含めて“1stフェーズ”と位置付けていました。いま新たなフェーズに入っていくなかで、事業面や資金・仲間集めなどの面においての新しい挑戦が求められます。

菜さんと苑子さんの話を聞いて、自分の役割をいい意味で手放していくのが個人的な一つのテーマだと思いました。昨年あるイベントで、2人にZ&Cの紹介を任せたんです。それまで自分がやってきたことを2人が担っているのを見て、組織の進化を感じました。進化に合わせて、自分の役割も変わっていくはずです。役割を見極めて、自分自身も成長していけたらと思います。

小林さん:私は福島で事業をしてきたので、やっぱりローカルの文脈での挑戦をしていきたいと思います。先ほど中小企業庁と一緒に「ローカル・ゼブラ推進政策」に取り組むという話がありました。これが地域の人たちに受け入れられるためには、取り組みのコンセプトや意義を、ある程度翻訳する必要があると思うんです。

小林味愛さん

そうでなければ、「よくある補助事業だったね」で終わってしまう可能性もある。日頃、地域に根ざした活動をしている経験を活かし、ローカルの共感者や支援者を増やせるような表現、伝え方を模索していきたいと思います。

阿座上さん:最近、さまざまなゼブラ企業の経営者と話していると、よく「お金への恐れ」について耳にします。お金との関わり方や人を頼ることへの恐れです。これは僕自身も経験があり、10年弱かけて乗り超えてきたものでもあります。そのときの知見や経験を、個人としてもZ&Cの事業としても、みんなに届けていきたいです。

また、みんなが成長するからこそ、僕自身ももっと成長したいと思います。いま挑戦すべきは、これまで阿座上個人としては関わりがなかった人たちとのつながりを作ること。アカデミアの人たちや政治家、「ゼブラ的な考え方に関心をもってもらえないだろう」と思っていた人たちともちゃんと話し、手を組み、新しい動きを生み出す力をつけたいと思います。

自分がバウンダリー(境界線)を超えることで、Z&Cの取り組みもバウンダリーを超えていく。個人もチームも強くなり、ゼブラ企業が育まれるエコシステムの実現に、さらに近づける4期目でありたいです。

PROFILE

Fumiaki Sato

編集者・ライター・ファシリテーター。「人と組織の変容」を専門領域として、インタビューの企画・執筆・編集、オウンドメディアの立ち上げ、社内報の作成、ワークショップの開催を行う。趣味はキャンプとサウナとお笑い。