2021.06.21 ZEBRAS INSIGHT

ゼブラ投資とは何か。VC投資との違いと、投資対象になる企業の5つの特徴


ゼブラ投資とは何か。VC投資との違いと、投資対象になる企業の5つの特徴のイメージ

ゼブラ投資とは何か。

よく比較される「VC投資」は、3-5年で上場・売却する計画を提出できる企業に投資をします。

ゼブラ投資は、VC投資ほど明確な条件はありません。「ゼブラ企業を目指す」というよりは「気づけばその対象になっていた」というような概念で、少し曖昧に「ゼブラ的企業」と表現されることもあります。あなたの会社も、実はゼブラ的企業としての特徴を備えていて、その投資対象となり得るかもしれません。

一般的なVC投資との違い

VC投資とゼブラ投資の違いを、共通の項目でわかりやすく比較すると以下のようになります。

VC投資は、早く投資を回収した方が価値が高まる構造になっています。お金の力で急成長を狙い、3-5年という限られた時間軸の中で、10-15倍の金銭的リターンを目指します。狙う市場規模は莫大で、その市場にイノベーティブな製品をリリースして広く流通できる見通しがあり、経済的な成功が期待できる、いわゆる「ユニコーン企業」を目指すようなスタートアップです。

もちろん、VC投資に適した企業もあるわけで、否定をするつもりはありませんが、成功する可能性のある全てのスタートアップが、その条件に適しているとも限りません。ゼブラ投資では、企業が実現したい社会的インパクトをより重視し、幅広い産業領域や、多様なビジネスモデルの事業を対象に投資ができます。

ゼブラ的企業の5つのタイプ

投資対象となるゼブラ的企業の特徴を、仮説として整理してみました。ちなみに、ひとつの企業が複数のタイプに当てはまる場合が多いです。

タイプ1: 市場創出が必要
 大きな市場に革新的な製品を送り込む、というよりは、新たな社会課題を見出し、まだ市場として広く認知されていないところに、率先して挑戦していくタイプの企業です。最近の代表例として、「FemTech(フェムテック)」の分野があります。Female(女性)とTechnology(テクノロジー)をかけあわせた造語で、女性の心身の健康ニーズに取り組むテックスタートアップの呼称です。しかし、そのような製品を販売する店舗はまだ限られており、まずはニーズを創出して市場をつくることが必要になります。他にも、例えば発展途上国向けの事業は、例えば20年以上のスパンで見れば、社会が発展して人口もさらに増えるので成長する可能性が高いものの、短期的な成功は見込めない場合が多いです。

タイプ2: 市場が狭い
 女性や人口の多い途上国のように、一度ニーズを創出できれば、大きな市場になる可能性を秘めた事業もあれば、そもそも狙っている市場の規模が限定的な場合もあります。そのような企業は、たとえ高い技術力があって、ビジネスとして成功できる見込みがあったとしても、上場・売却までは難しいと判断され、VC投資には向きません。

タイプ3: 事業の成熟に期間が必要
 年に一度しか結果がわからない場合が多い一次産業や、5年から10年といった単位で効果を見定める必要のある教育産業など、ITソフトウェアと比べてPDCAを回すのに多くの時間がかかる事業が、この類型に当てはまります。無理をして短期間で成長を目指すと、本質からズレたマーケティング先行型の事業となり、失敗する事例も見受けられるので注意が必要です。

タイプ4: 供給に成約がある
 「商品が売れすぎるのも問題だ」という事業もあります。例えば、供給者側の社会課題の解決を主な目的に掲げていたり、商品の作り手の数が限られている場合には、売れすぎると供給が逼迫します。頑張って一時的に供給量を増やせたとしても、商品の質の低下が心配になります。仮に売上急増が一過性だった場合には、後に雇用を維持できなくなる心配もあります。こうした事業は、無理のない範囲で少しずつ成長していくのが理想であり、100年先も安定して雇用を維持できる見通しを立てることが、最も重要な目標です。

タイプ5: 経済的な成功と社会的インパクトの相関性が低い
 世の中、「儲かることをすれば社会もよくなる」というわけではありません。例えば、「低所得者層より富裕層を狙った方が儲かる」とか「公立より私立に売った方が儲かる」といったように、短期間で時価総額の最大化を目指していると、経営者が本当に実現したい社会的インパクトへの道のりが遠のいてしまう場合だってあります。でも社会的インパクトとの相関性が低いだけで、経済的な成功を諦めるのはもったいない。もし長期的に取り組むことで、望む社会的インパクトを実現し、かつ経済的な成功も収められる見通しが立つのであれば、必要な投資を受けられるべきでしょう。

従来の評価基準では、投資対象になりにくいスタートアップが年々増えています。しかも、長期的な視点をもって、これまでIT企業だけでは十分に革新できていなかった事業領域にも、果敢に挑戦しています。そうした企業にも投資できるように、Z&Cでは、あえて投資回収の時限を設けない枠組みを用意することで、より長期的な視点で事業に取り組める形を整えています。

ゼブラ投資はまだ新しい概念です。

Z&Cでは、投資対象として、あらゆるタイプのゼブラ的企業を探していますが、やがては市場創出型ゼブラ投資、ニッチ市場型ゼブラ投資、成熟型ゼブラ投資などといった、各タイプに専門特化したノウハウが開発されていくことも、期待をしています。

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ゼブラ編集部

「ゼブラ経営の体系化」を目指し、国内外、様々なセクターに関する情報を、一緒に考えやすい形に編集し、発信します。