2022.03.23 ZEBRAS INSIGHT
国内のゼブラ的投資家まとめ
日本でもVCからの未上場企業向けの投資が広がってきており、2021年の第3四半期には四半期単体の調達額が初めて2000億円を突破するなど盛り上がりを見せています。
一方Zebras and Companyを創業して以来、我々が経営相談を受ける中で多くのゼブラ起業家から「ビジョンやパーパス、それに適した成長のあり方を理解して投資してくださる投資家になかなか出会えない」といった声が数多く寄せられました。
”ゼブラ投資とはなにか”の記事にも、社会課題の解決を本質的に追求する起業家に対して、長い目線で成長を志す企業に適した金融が不足していることや、上場やM&AというExit手段が投資を受ける起業家の意向とそぐわないケースがあることなどを書きました。
今回は、起業家のみなさんが成長にあった資金調達を考える際に参考にしてもらうために、そうしたゼブラ企業に適する投資家、ゼブラ的投資家たちの情報を集めました。
主なゼブラ的投資家の一覧
talikiファンド
インキュベーション事業 / オープンイノベーション事業/メディア事業を展開する株式会社talikiが運営する社会課題解決型ファンド。通常のVCと同様の出資方法のほか、株式を一切取得せず利益と連動する形でリターンを算出する出資方法なども活用可能です。
150名以上の社会起業家のサポートを行い培ってきた事業立ち上げのノウハウや、当社が支援する社会起業家同士のコミュニティを活用できます。(当社HPより引用)
また、社会起業家の事業と想いにスポットをあてたオウンドメディアを展開するほか、起業家・起業家志望者に向けたプログラムも実施しています。
[参考URL]
https://taliki.vc/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000036295.html
GLIN Impact Capital
「より良い資本主義の構築」をミッションに2021年3月に立ち上げられた、グロースステージの社会課題解決スタートアップを対象にしたインパクトファンド。
社会的インパクトリターン(事業が社会課題解決へ与えるポジティブな影響の拡大)と経済的リターンに相乗効果のある企業へクロスオーバー投資(上場2年前前後に出資し、上場後1-3年伴走支援)を行っています。出資後、事業成長を支援するとともに、上場後も社会的ミッションを中心に据えた持続的な成長が出来る体制構築を支援しています。ハーバードビジネススクールの教授など、インパクト投資、ESG領域に造詣の深いメンバーがアドバイザーに名を連ねています。
[参考URL]
https://www.glin-impact.com/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000076593.html
フューチャーベンチャーキャピタル
京都に本社を置く独立系ベンチャーキャピタル。「開業率を高める創業ファンド」、「廃業率を下げる事業承継ファンド」、「地域に事業を創造するCSVファンド」の設計・運用など地域への展開に力を入れています。全国の地域金融機関をパートナーとする「地方創生ファンド」では、上場や事業売却等の出口戦略を目的としない、地域貢献性の高い地方の中堅・中小企業にも投資を行っており、運営ファンドは35本(2022年3月現在)、投資先企業は300社を超えています。
また、大阪で設立された「おおさか社会課題解決ファンド」では働きがいの創出や空き家問題、子育てと仕事の両立や障がい者の自立といった様々な課題解決を目指す企業に投資し、その詳細が下記HPに公開されています。
[参考URL]
https://www.fvc.co.jp/
https://www.fvc.co.jp/service/social_fund.html
KIBOW 社会投資
東日本大震災の3日後に始動した救援・復興支援プロジェクト「Project KIBOW」から始まり、2012年の一般社団法人化以降は 「場」の提供(イベント開催)、寄付活動、社会的インパクト投資を主活動として展開しています。
2021年10月には通常のVCより長い15年をファンド回収期間とする第三号ファンドも設立。
2020年には投資したmanaby社の株式を、パートナー企業複数社に譲渡するといったExit to Communityの事例もあります。
KIBOW社会投資ファンド、投資先のmanaby社株式をmanaby社のパートナー企業に譲渡「ソーシャル・フランチャイズ」モデルの拡大へ貢献|一般財団法人KIBOWのプレスリリース
[参考URL]
https://kibowproject.jp/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000063884.html
池森ベンチャーサポート
無添加化粧品を定着させたファンケルの創業者池森賢二氏が2018年に立ち上げた投資会社で、通常のファンドと異なり期限を設けない出資が可能です。投資審査においては、社会課題に対する捉え方や解像度、パッションや人間力に共鳴できるかを重視しつつ、一定の経済性も求めています。エンジェル投資家とVCの中間ぐらいの位置づけで、伴走支援としては、池森氏のメンタリングのほか、投資先のニーズと当社のキャパシティに合わせて必要なタイミングで出来る範囲の支援を行っているとのことです。
[参考URL]
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2818D0Y1A620C2000000/
https://note.com/siif_pr/n/n7d88f877e8be
創発の莟ファンド
2021年に鎌倉投信株式会社とフューチャーベンチャーキャピタルが共同で設立した投資ファンド。
シード・アーリーからレイターまで全ステージを対象とすることや、持続的成長性を優先的に考え、必ずしもIPOを投資目的とせず、投資回収(EXIT)として、経営陣や会社による株式の買戻し、従業員や取引先、顧客等への譲渡(Exit to community)、事業会社との連携(M&A)、海外を含む機関投資家への譲渡等、多様な選択肢を提供していることなど、非常に特徴的なファンドです。
[参考URL]
https://www.kamakuraim.jp/tsubomi/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000065.000011403.html
JVPF(日本ベンチャー・フィランソロピー基金)
日本財団とSIP(ソーシャル・インベストメント・パートナーズ)が運営を行う国内初の本格的なベンチャー・フィランソロピー(VP)基金。
資金提供のみならず、経営支援を通じて社会的事業を行う組織の成長をサポートしています。「教育・若者の就労支援」、「育児・女性の活躍」、「地域コミュニティ」を支援対象領域としており、支援先に株式会社Ridiloverや公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン等があります。選定プロセスや支援先の社会的インパクトのKPI、過去支援先の近況等が掲載されているアニュアルレポートも毎年発行しています。(2020年度アニュアルレポート)
[参考URL]
https://jvpf.jp/
https://sipartners.org/what-we-do/
SIIF
インパクト投資のエコシステムづくりのために設立された財団法人。インパクト投資のモデル開発や実践、普及のための環境整備、調査研究・政策提言に取り組んでいます。
投資を行うのみならず、社会的インパクト評価・マネジメントの普及や、PFS(成果連動型民間委託)・SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)の促進、フィランソロピーの変革など、取り組みは多岐に渡ります。
GSG (The Global Steering Group for Impact Investment)やロックフェラー・フィランソロピー・アドバイザーなど、海外団体とのパートナーシップも多数締結しており、包括的にまとまった多くのレポートを発行しています。(2021年度版 インパクト投資に関する 消費者意識調査)
[参考URL]
https://www.siif.or.jp/
Zebras and Company
ゼブラ企業への投資を普及・拡大させていくため2021年に設立された投資会社。会社形式なので期限のない投資が可能であり、IPO/M&Aを前提としない投資が可能。企業側のニーズに合わせて最適な投資スキームの検討を行うとともに、社会的インパクトと経済成長の両立を支援するために必要な経営支援を行っています。
1号案件の(株)陽と人への出資に際しては、IPOやM&Aなどのイグジットを前提としない投資を検討する投資家や起業家に応用していただくことを狙って、その投資理念とスキームを基にしたタームシートの雛形(LIFE type1 : Long-term Investment structure for Future Equity=将来の公正のための長期的投資スキーム 試作1)を公開しました。
[参考URL]
https://www.zebrasand.co.jp/990
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000081881.html
今回ご紹介した投資機関以外でも、投資型クラウドファンディング(FUNDINNO、イークラウド等)や、私募債の発行(Siiibo)、レベニューシェア型での将来債権の買取り(Flex Capital, Yoii)など、様々なゼブラ起業家に適した新たな金融が続々と生まれています。
今回ご紹介した投資機関を含め、それぞれの投資機関・投資手法には、それぞれ固有の特徴や制約、いわばお金の「色」があります。
今回の記事を読んで、自分たちにあった資金調達を改めて考え、次の一歩、そしてその先をどう実現するかをより具体的に相談したい、とお考えになりましたら、ぜひお気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。
PROFILE
ゼブラ編集部
「ゼブラ経営の体系化」を目指し、国内外、様々なセクターに関する情報を、一緒に考えやすい形に編集し、発信します。