2021.06.21 ZEBRAS

共同創業者の3人が語る、それぞれの原体験と創業にかける思い。


共同創業者の3人が語る、それぞれの原体験と創業にかける思い。のイメージ

株式会社Zebras & Company(ヨミ:ゼブラ アンド カンパニー、以下 Z&C)の共同創業者、阿座上陽平さん・陶山祐司さん・田淵良敬さんは、「ゼブラ」という概念を提唱した西海岸の団体「Zebras Unite」の東京チャプター「TOKYO Zebras Unite(以下 TZU)」を立ち上げ、2019年より情報発信を行ってきました。

このたび、啓蒙にとどまらず、社会課題解決と持続的な経営を可能にする「ゼブラ経営」の社会実装を目指して、Z&Cを創業致します。今回は、3人の原体験にも迫りつつ、創業の背景とそれぞれが活動にかける思いを聞きました。

 

本当に社会を良くする企業に資金が集まらない現状

陶山 祐司(すやま ゆうじ)

ーーTZU創設、今回のZ&C創業は、どのような課題意識から始まったのでしょうか。3人それぞれが感じてきたものを教えて下さい。

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陶山

僕は新卒で経済産業省に入省し政策立案に関わっていました。しかし、既存の政策のあり方で社会を良くしていける感覚が持てず、新しい技術や取り組みを持つ企業の支援をしようとVC(ベンチャーキャピタル)に転職。そこでの経験が今につながっています。

転職先のインクルージョン・ジャパンは、事業計画や商品サービスが固まっていない創業前の企業に対しても、多い時は3000万円もの投資をするような、ちょっと変わったところでした。かなり早い段階で投資判断をするので、その時の事業規模や事業計画の有無はあまり関係なく、今後の市場の可能性や創業者の思いについて深く議論し合うことを繰り返していました。

4年間で600人以上の起業家や起業家候補の方々と話をする中で、VC投資の対象になる人はわずかだったんですね。経営者として優秀で、社会を良くする事業を考えていて、一定の事業規模も目指せそうな経営者はいます。しかし、その人自身や事業の性質を深く考えたときに、VC投資という資金の性質があっていなかったり、上場を目指すのが正解ではないということが多くて。もやもやした気持ちを抱えたまま、VC以外の支援方法がないかと考えていました。

ーーどんな起業家のことでしょうか?

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陶山

成長に期間が必要な事業をしていたり、社会性を重視する価値観を持った方たちですね。こだわりが強いあまり、利益を最優先で目指すという考え方や、株主価値の最大化が求められる上場という仕組みにはハマりにくくなっていました。

田淵 良敬(たぶち よしたか)
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田淵

私も陶山さんと似た経験をしています。社会起業家へのインパクト投資を行なっていたので、多くの素晴らしい起業家と出会ってきました。社会の為になることを追求した結果、短期的な事業規模拡大を目指さない起業家も多くて。例えばある女性起業家は、5年後に20人の会社を目指すことを理想に掲げていました。

このような企業には、自由度が高く長期的な視点で扱える資金が必要であるにも関わらず、提供できる投資家は非常に少ないのが現状です。基本的にはVC投資型で、短期的な上場を目指すことが条件である場合が多く、僕自身が応援したいと思う起業家が求めている資金や支援と、大きな性質のギャップがあると感じていました。

ーー起業家と深く関わるからこそ課題を感じたのですね。阿座上さんはいかがですか?

阿座上 陽平(あざかみ ようへい)
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阿座上

僕は企業のブランドとマーケティングストラテジーの策定をお手伝いしてきたのですが、なぜか考え方がすり合わない企業があるんです。話していても「これだ!」というビジョンが出てこないし、プランを練ることもできない。そうした企業の特徴を後から振り返ってみると、経営者が社会や会社を良くすることよりも、自分の利益や名声を求めていたのだと気がつきました。

ここから社会にインパクトを与えようと思っていなくても、言葉や見せ方がうまい経営者のもとにお金が集まり、本当に社会を良くしようとしている経営者と、その経営をサポートできる支援者や資金が少ないというのが、我々が共通して感じてきた課題です。

Z&C創業で次のフェーズへ

ーーそんな課題意識を持っていた3人が、今回のZ&C共同創業に至る経緯を伺いたいです。順を追ってお伺いします。まずは3人の出会いとTZU創設までを教えてください。

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田淵

陶山さんとは、2017年に開催したあるイベントで、初めて出会いました。ファンド運営の話で意気投合したのを覚えています。その後、当時働いていた組織を退職して、次の人生について考えていた頃に、ビジネススクールの同級生から、オックスフォード大学で行われる「スコールワールドフォーラム」という社会起業家のイベントに誘われたんです。しかし、仕事をしていなかったこともあって、旅費が足りなくて。そのことをSNSで投稿したら、陶山さんが「寄付します!」とメッセージをくれたんです!

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陶山

田淵さんがイギリスに行って話を聞いてくるというが、単純に面白そうだなって(笑)

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田淵

おかげで無事にイベントに参加できました。そのイベントで出会った方々に、片っ端から先ほど話した投資への課題意識を伝えると、多くの人が共感してくれて。その一人が、「ゼブラ」を提唱したZebras Unite 共同創業者のAstridでした。彼女の活動を聞くうちに、私が応援したかった企業は「ゼブラ企業」と捉えられるのではないかと感じ始めました。

カンファレンス後、帰国してからはSIIF(一般財団法人 社会変革推進財団)で働くことになり、陶山さんも関わっていたので、一緒にインパクト投資ファンドの組成や、インパクト投資の普及に関わることに。価値観も仕事の仕方も合うので、一緒に事業をしてみないかと話すようになったんですね。

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陶山

大企業がしている目的が明確でない寄付を集めて戦略的なVP(ベンチャー・フィランソロピー)を運用しようという話で盛り上がったのを覚えています。実際に、何社かの大企業に提案しましたね。田淵さんの今後に関しても「自分で起業するのもありじゃないですか?」とか、勝手にいろいろと言ってました(笑)

ーー2人でTZUを創設しようと決めたシーンを覚えていますか?

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田淵

あれは忘れもしません。日比谷松本楼で食事をした後、どんな事業があったらいいかと話しながら帰っていた時、夕陽をバックに歩く陶山さんの顔つきが、変わったんですね。

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陶山

なにそれ!全く記憶にないです(笑)。

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田淵

1分くらい無言の時間があって。深く考えて、覚悟が決まったように見えましたよ(笑)。

ーー陶山さんが決断された理由は?

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陶山

陶山さん:昔から政治の道に進むことも視野にいれているんですが、その頃、あと7年後くらいに行こうかなと想像していたんですね。それを伝えると田淵さんから「だったらその7年、一緒にやってみましょう」と言われて。確かにファンドの取り組みはしたいと考えていたので、スタートしてみることにしました。あれはどこで話したんだっけな…。

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田淵

赤坂のWHY NOT ですよ!

ーー阿座上さんとはどのように出会われたんですか?

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田淵

たしか、2019年くらいの春。まだSIIFにいた時に、阿座上さんが打ち合わせで来てくれたんですよね。

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阿座上

知人がSIIFに転職をして、社会起業家を育てるコーチを探しているから話を聞きたいと呼んでもらって。行ってみると会議室の中で、3人の方が座っていました。遅れて一人部屋に入ってきて。ジャケットにTシャツで、首には骨伝導イヤホンをつけ、腰はやや低いんだけど、何だか偉い雰囲気を醸し出している。それが田淵さんでした。(笑)

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田淵

阿座上さんは「チーム阿座上」という名前で来てました。僕もこの人がボスだ、偉い人だって感じていましたよ。(笑)

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田淵

少し真面目な話に戻すと、TZUとして最初に取り組むべきは「ゼブラ」を知ってもらうことだよねと話していました。考え方を発信し、共感してくれる人が集まれば、自然と活動は広がっていくだろうと考えていて。それに長けている人として思い浮かんだのが阿座上さんでした。

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阿座上

田淵さんから連絡をもらったのは、前職を辞め次に何をするか決めないで1年を過ごそうとしていたタイミングでした。話を聞いて「ゼブラ」と検索してみると、某文房具メーカーしか出てこなくて、確かにブランドが確立されていないな、と。先ほど話した経験から、根本にある思いには共感していたし、せっかく誘ってもらったので、一緒にやることを決めました。

3人揃ったTZUでnoteを立ち上げて「ゼブラ企業」について発信を続けていくうちに、日経新聞や、去年Forbesが誌面をリニューアルした際の『「新しいビジョン」入門』というテーマに取り上げてもたえて。時代に共感されるコンセプトだと確信しました。

Forbesに掲載された記事はこちら

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田淵

ラグジュアリーブランドとして有名なCartierが行う、世界的に有名な女性社会起業家の支援プログラム「Cartier Women’s Initiative」も、この考えに共鳴してくれて。今年から審査基準にゼブラ的な項目が入るようになりました。例えば、社会的インパクトという指標にも、一般的に言われるスケールだけではなく、人や社会に与えた影響の深さの観点が入ったり。長期的な利益を重要視する考え方も広がってきています。

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阿座上

情報発信によって自然と「ゼブラ企業」というワードが一人歩きを始め、ある程度の手応えを感じてきたこのタイミングで、ゼブラ企業への経営支援や、行政・金融機関との連携、ゼブラ企業らしい経営の社会実装を進めていくために、株式会社としてZ&Cを創業するに至りました。

ゼブラ企業の4つの特徴

ーー情報発信だけではなく、さらに本格的に活動を始めるフェーズに入った、と。これから社会に増やしていく「ゼブラ企業」がどんな特徴を持つ企業なのか、改めて教えていただけますか?

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阿座上

そもそもゼブラとは、必ずしも上場やユニコーン(評価額1,000億円以上の未上場企業)を目指すことだけが良い会社の基準ではない、という考えから生まれています。利益や短期的な事業拡大、上場だけを目指すのではなく、長期目線でみても社会的に良く、従業員や原材料の供給元など全てのステークホルダーを大切にしながら、全体として豊かになっていける会社を「ゼブラ企業」と言っています。まだ生まれて間もない概念なので変わっていくと思いますが、現時点ではZ&Cとしては4つの特徴として整理しています。

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田淵

一つ目は「ビジョンが共有され、行動と一貫している」こと。スケールや利益の最大化ではないビジョンを持っている企業です。ステークホルダーとの相利共生 *1 を目指すと、「そもそも何が成功か?」から考えなければならず、目標の設定が難しくなります。

*1 相利共生(そうりきょうせい、Mutualism)・・・異なる生物種が同所的に生活することで、互いに利益を得ることができる共生関係のこと。

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陶山

自分のしたいことや、社会のあるべき理想像を突き詰めて考え、具体的にイメージできる経営者は多くありません。正解がなく、実現可能性もわからないなかで、目指す理想を言い切り、人を動かしていく勇気と判断力を持つことは並大抵なことではありません。

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田淵

二つ目の特徴は「事業成長を通じてより良い社会をつくることを目的としている」こと。事業を通して、複雑性のある社会課題の根本解決を目指している企業です。社会課題の真因は、まだ誰も気付いていない可能性があります。認知がされていない、もしくは一部の人だけにとって課題になっているようなケースもそれに当たります。

ーー取り組む意義が理解されづらい課題ですね。

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田淵

三つ目は「時間、クリエイティブ、コミュニティなど、多様な力を組み合わせる必要がある」こと。これは時間軸の話です。IT系の事業や企業はPDCAを短期間で回すことが可能ですし、資金投下によってさらに早めることができます。それに比べて農業や教育などの領域は、PDCAを回すのに数年かかったりする。課題解決のために、短期的に資金を用いるのではなく、時間をかけたコミュニケーションや、ブランド構築などといったアプローチが必要となります。

最後に、「長期的でインクルーシブな経営姿勢である」を持っている企業。長期的というのは3つ目にも含まれますね。その上で、株主至上主義ではなく、従業員や各ステークホルダーのことを包括的に考えながら経営を行っている企業のことです。

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阿座上

このような企業のプレゼンスを高めていくことや、金融や投資との接点を増やしていくこと、ゼブラ企業らしい経営の体系化を確立していくことがZ&Cの取り組んで行きたいことです。

人、組織、社会、地球の良い循環

ーーZ&Cが目指す社会について聞いてみたいです。今回は3名の価値観や考え方に迫るということなので、それぞれがイメージしている「いい社会」を教えてもらえますか?

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陶山

僕の考える「いい社会」のイメージは、高校時代の恩師から言われた「お前はまだ気付けんか」という言葉がきっかけで出来ています。僕の人生は99.5%が野球で出来てると、今でも思っているほど野球から強い影響を受けていて。その中でも特に強い影響を受けたのが、恩師から問われたその言葉です。当時は意味が分かりませんでしたが、なぜ好きな野球ができているのかを考えろということだったんだろうと、今は感じています。

社会に出て初めて、自分が野球ができていた背景には親がいて、先生がいて、学校があって、それを支えている社会があったことを理解しました。それから、今度は自分がその作り手になりたい。人が好きなことに熱中できる社会を作りたいと考えるようになったんです。

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田淵

私も、陶山さんと重なる思いがあります。「いい社会」と言っていいかわかりませんが、大事なのは自由と多様性だと思っています。自分が面白くないと思っている仕事をして、常識に縛られて生きるのではなく、自由にやりたいことをできる方がいいじゃないですか。経営者や政治家が偉いとかではなくて、色々な考え方や夢の叶え方があって、だれもが自分らしい人生を歩んでいける。それがいい社会だと思います。

ーーどうしてそう思うようになったのですか?

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田淵

明確なきっかけは覚えていないですが…。そうですね、根本にあるのは引っ越しが多かった経験かもしれません。小学校で3回も転校したので、毎回友達を作る中で、人付き合いが上手になったんですよね。いわゆる不良グループとも、勉強好きなグループとも仲良くて。それぞれ魅力的な部分があるなと感じていました。

あと話していて思い出したんですが、僕はもともとアーティストになりたかったんです。アメリカの大学に面接に行くほど本気でした。25歳くらいになると、周りにもっと才能のある人がいることに気づき始めて、自分がアーティストになるのではなく、そうした人たちを支えるためのコミュニティを作るようになりました。資金集めや集客をこちらでやって、アーティストに作品を作ってもらう。そんなイベントを開いていて、周りの人からは「裏方やってて楽しいの?」と言われることもありましたが、不思議と楽しかったんですね。

ーー個性や才能を持った人が活躍できる仕組みづくりをされてたんですね。

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阿座上

僕は、人と組織と社会の良い循環を生み出したいと常々思っています。良い循環というのは、誰かのためを思ってやったことが、他の人や社会の不幸、環境への負荷に繋がらない循環のことです。人はだれもが「良い」と思うことをしているけれど、歯車が合わずに歪みが生じているから課題が生まれていると捉えていて。その歯車を合わせることで、誰かの「良い」が、他の人を幸せにし、社会全体を豊かにするようにしたいんです。地球の共通資源を大切にしつつ、それぞれの違いや個性を認めながら生きていける社会が良いなと思っています。

そうした社会を目指す上で、お金の流れを考えることはとても重要です。人と組織と社会と地球。それぞれへの影響を深く考え、全体を豊かにしていける事業や企業に、資金が集まるような仕組みを作っていきたいと考えています。

ゼブラが“格好よい”と言われる社会に

ーーありがとうございます。皆さんの描いている「いい社会」と、Z&Cの目指している社会との繋りを感じました。最後に、これからZ&Cが社会でどんな役割を担っていきたいか、教えてください。

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阿座上

引き続き「ゼブラ企業」という概念を、みんなが当たり前に知っているようになるまで浸透させたいですね。当たり前すぎて、この言葉自体がなくなることを目指します。そして、本当に社会を良くしようとしている会社と、金融と投資のプレイヤーを繋げていく役割を担いたいです。最初はZ&Cが投資する形で関わりをつくっていき、モデルケースができたらファンド設立をしていきたいと考えています。

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陶山

社会を良くしたいと考えている人の行動を促せる場にしたいですね。相談に乗ったり、その人たちを支援する中で溜まった知見が、また誰かの行動を促していく。そうやって、社会をより良くする挑戦を後押しできる存在でいたいです。

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田淵

まだ知られていない素晴らしい企業や活動が世の中にあること。そして新しい融資や投資の方法があることに気づいてもらえたら嬉しいです。この活動こそが、次の社会をつくる“格好いい”取り組みだと思ってもらえるように、これから頑張っていきたいと思います!


[執筆・編集] 阿座上 陽平・佐藤 史紹  [撮影] 澤 圭太

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PROFILE

Fumiaki Sato

編集者・ライター・ファシリテーター。「人と組織の変容」を専門領域として、インタビューの企画・執筆・編集、オウンドメディアの立ち上げ、社内報の作成、ワークショップの開催を行う。趣味はキャンプとサウナとお笑い。